チャルダッシュ(モンティ)

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先週の土曜日は「SP飲み会」でした(SPレコードとは、LP登場以前、主に1940年代以前のレコードです)。メンバーは、九州を代表するSP愛好家のふ○ジョンさん、本州を代表するSP愛好家のポンちゃ○さん、それと素人代表のLoree(以上3名)。この会合は昨年から「やるやる詐欺」状態でしたが、ようやく実現しました。
 
夕刻、都内某所のビル9階のレコード屋さんに集合し、さらにもう1軒のレコード屋さんにハシゴした後、ふじ○ョンさん行きつけのカレー屋さんでSP談義。この会合では「クライバー」と言えばカルロスにあらずエーリヒ、「フルニエのドボコン」と言えばジョージ・セル指揮ベルリン・フィルのステレオ録音にあらずクーベリック指揮フィルハーモニア管のSP盤を指すことは言うまでもありません。
 
そもそも、初心者のLoreeに参加資格があるのか疑問ですが、とりあえず数枚所有しているということで、暖かくメンバー扱いしてくださったお二人に感謝します。ふじジョ○さんもぼくも、ポン○ゃんさんとお会いするのは初めてで、ふじジョ○さんはこの会合のためにわざわざ上京し、ついでにミチエとも会ったそうです。
 
レコード屋さんではそれぞれSPを購入したのですが、何を隠そう、ぼくが自力でSPを買ったのはこの日が初めてでした!わが家のわずかなライブラリーは、先祖伝来のカペーとか、諸先輩方からいただいたものとか、ネットで代理で落札していただいたものとか、他力本願の結晶です(汗)この日、ついに(ランチ半月分をはたいて)1枚購入し、しかもそれをポ○ちゃんさんに託して復刻していただきました!
 
<曲名>
チャルダッシュ(モンティ)
 
<演奏>
イヴォンヌ・キュルティ(ヴァイオリン)、G.van.パリス(ピアノ)
【1929年頃録音、Columbia 5290(英)、マトリクス番号L869】
[裏面の「マドリガル」と合わせて、ポンちゃんさんの記事でお聴きいただけます]
 バイオリンの古澤巌さんは若い頃から、よく私の自宅にやってきた。名バイオリニストのイボンヌ・キュルティが弾く『チャルダーシュ』などに聴き入っていた。戦前の名手たちのように、小品を個性豊かに弾く彼のスタイルは、ここが出発点になっていると思う。(クリストファ・N・野澤、2006年2月22日付、日本経済新聞への寄稿記事より)
 モンティのチャルダッシュは、戦後日本では古澤巌さんがアンコール・ピースにしたのに始まり、天満敦子さんなどもレパートリーにして人気を博していますが、この二人共が実は、キュルティの演奏を聴いて原点としておられるのです。(クリストファ・N・野澤、「SPレコード」誌への寄稿記事より)
 セクシーで頭が切れて、でも可愛くて…そんな女性を魅力的と思わぬ男はいないであろう、まさにそんなイメージの演奏である。(上杉春雄)
イヴォンヌ・キュルティ!ぼくがこのヴァイオリニストを偏愛していること、また、彼女に関する情報はほとんどないことは過去記事に書いた通りです(※)。そんな中でも「チャルダッシュ」はクリストファ・N・野澤氏があちこちで紹介していることから、キュルティの代名詞的なレコードとなっています。今ではたいへん有名なこの曲を、レコードで最初に広めたのは、今となってはまったく無名のキュルティだったのではないかと思います。
 
しかしぼくは「チャルダッシュ」よりも裏面の「マドリガル」に惹かれます。「マドリガル」は過去記事でも紹介したことがありますが、ポ○ちゃんさんのクオリティの高い復刻であらためてキュルティの魅惑のヴァイオリンを皆さんに聴いていただけるようになって、感無量です
 
ポ○ちゃんさんには、続編として世界初復刻(たぶん)を含む3枚6面のキュルティを託しました(著作権等の問題がないものに限る)。計画犯のごとく用意周到に現物持参したLoreeのリクエストを快く受け入れていただき、ありがとうございます。楽しみにしています
(結局、他力本願なLoree)
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ミュージカル「ローズ・マリー」より(フリムル)

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先日、HRC(Historic Record Club、ヘンタイレコード倶楽部)の会合でM先生とともにibotarow先生のご自宅におじゃまして、SPレコード三昧の4時間。その前夜にも横浜某所で同じメンバーによる男子会(平均年齢は非公表)があり、両先生には2日連続でお世話になりました。
 
(今回聴かせていただいたレコード)
○「カルメン幻想曲」よりハバネラ(サラサーテ) ヤン・クーベリック
○ヴァイオリン協奏曲より第3楽章(メンデルスゾーン) ホアン・マネン
○ハンガリー舞曲第2番(ブラームス) ヴォルフシュタール
○ラ・フォリア(コレッリ) ヴァーシャ・プシホダ
○ラ・フォリア(コレッリ) ジョルジュ・エネスコ
○ヴァイオリン・ソナタ第4番(ヘンデル) ジョルジュ・エネスコ
○ラルゴ・エスプレッシーヴォ(プニャーニ) ジョルジュ・エネスコ
○テンポ・ディ・メヌエット(クライスラー) ジョルジュ・エネスコ
○喜歌劇「パガニーニ」より(レハール) イヴォンヌ・キュルティ
○ミュージカル「ローズ・マリー」より(フリムル) イヴォンヌ・キュルティ
 
すべて1900~20年代のお宝レコードたち。ヴァイオリン以外にも声楽のレコードをたくさん聴かせていただきましたが、名前を覚えられませんでした(汗)全部売り払ったら車1台買えそうです、間違いない。
 
プシホダとエネスコの「ラ・フォリア」は版違いで、プシホダはレオナール版、エネスコはダーヴィド版でした。プシホダのレコードは傷モノで、2枚組のうち2枚目のみ(カデンツァから最後まで)、他のレコードの配送時にクッション代わりに使われていたそうです(!)。何を隠そう、ぼくはプシホダ大好きで復刻CDを20枚くらい持っていますが、「ラ・フォリア」は未聴でした。しかもこのカデンツァはゆうちゃんが今ちょうどレッスンで弾いている曲です!なんという巡り合わせ。
 
でも、今回最も感銘を受けたのはエネスコです。学生時代、初めてエネスコを(復刻CDで)聴いたとき、その演奏を期待外れと感じたことは否定しません。でも、この日聴かせていただいたエネスコ(特にヘンデルの緩徐楽章)の「弾く」とも「歌う」とも表せない、静かに語りかけてくるヴァイオリンには音楽を超えた力を感じずにはいられませんでした。芸術の名に値する演奏とは、こういうものかもしれない。
 
そして愛しのキュルティ。昨年、Hさんとともにおじゃました際にもキュルティを堪能しましたが、今回のレコードは最近落札したばかりという新品(?)。初めて聴かせていただきました。
 
<曲名>
ミュージカル「ローズ・マリー」より“Indian love call”(フリムル)
 
フリムル(1879~1972)のオペレッタ風ミュージカル「ローズ・マリー」は、1924年ブロードウェイ初演。製作スタッフにはオスカー・ハマースタイン2世の名前もあります。“Indian love call”はこのミュージカルの当時の評判を反映するように多くのアーティストがカバーし、クライスラーも録音しています(1926年)。映画化もされています(映画版のあらすじ→ http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=9828 )。
 
<演奏>
イヴォンヌ・キュルティ(ヴァイオリン)、ゴドフロイ・アンドルフィ(ピアノ)
(A)【Pathe X9747】[マトリクス番号8665](1927年頃録音)
(B)【Pathe X98138】[マトリクス番号301695](1933年頃録音)
参考音源【日本コロムビア J1605】[マトリクス番号301695]
 
キュルティはこの曲をPatheに2回録音しています。ibotarowさんのレコードは(A)です。(B)は復刻CDが出ていますが、先日は存在を忘れていました
 
この曲はクライスラーの録音でもそうですが、原曲を知らない人(ぼく)がいきなりヴァイオリン編曲で聴いても雰囲気をつかみにくい。映画版でこの曲が歌われるシーンを予習してからキュルティを聴くほうがミュージカル「ローズ・マリー」の世界に入り込めるかもしれない
 
キュルティ探求の道は、まだまだつづきます。
 
☆【Pathe X9747】の画像はibotarowさんからお借りしました。

マドリガル(シモネッティ)

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一昨日はHさんとともにib○tar○w先生のご自宅に伺い、SPレコードを聴かせていただきました。わが家にはSPどころかLPのプレーヤーもありません。SPを、復刻CDでなく、「生」で聴かせていただくのは、今春、奈良在住のMさんのご自宅に伺ったとき以来です。(SPとは、LP登場以前、主に1940年代以前のレコードです)
 
聴かせていただいたSPは、マリー・ホールに始まって、フランツ・フォン・ヴェチェイ、アンリ・マルトー、マヌエル・キロガ、ミッシャ・エルマン、ヨーゼフ・ハシッド…(ヴァイオリンばっかり)。いずれも片面の収録時間が3~4分程度なので、ジョコンダ・デ・ヴィートのバッハの無伴奏のシャコンヌ(約15分)は2枚両面(つまり4面)、ぼくのリクエストでかけていただいたイゾルデ・メンゲスのヘンデルのニ長調ソナタ(ぼくが知る限りこの曲の最も古い録音で、復刻CDはおそらくない)も4つの楽章が各1面、2枚両面にわたって吹き込まれたレコードでした。
 
そして、イヴォンヌ・キュルティ。復刻CDではない、SPのキュルティ!初めて聴きました。ぼくがこのヴァイオリニストを偏愛していること、また、彼女に関する情報はほとんどないことは過去記事に書いた通りです。そもそも、ib○tar○w先生は2年くらい前からキュルティの情報交換をきっかけにお付き合いさせていただくようになった方で、Hさんはib○tar○w先生から紹介していただいた方。お二人に実際にお会いするのは初めてでしたが、わがままリクエストにも快く(?)応えてくださって、SP三昧のひたすら幸せな4時間でした。
 
聴かせていただいたキュルティのうち、ib○tar○w先生所蔵のシューマンの「子守歌」(Berceuse)は復刻CDがなく、≪DISCOPAEDIA OF THE VIOLIN,1889-1971≫にも掲載されていない珍品でしたが、そんな希少価値よりもキュルティのヴァイオリンが絶品!「恍惚」という言葉はこのレコードのために使わなければならない。裏面に入っていたBOLDIなる作曲家の小品(Chanson Bohemienne)も初めて聴きましたが、シューマンのあまりの魅力にすっかり印象が霞んでしまいました。
 
また、Hさん所蔵の「トセッリのセレナータ」「純な告白(飾らぬ打ち明け)」(日本コロムビア盤)も復刻CDがない貴重なレコードで、しかも封入されている解説書はなんとキュルティの顔写真入り!キュルティの写真は2枚しか知られていないというのが業界の定説です(本当です)が、この顔写真はその2枚のどちらでもない未知の写真なのです。盤質も極上のコンディションで、針音はほとんどなく、キュルティ節を堪能しました。
 
そして、モンティの「チャルダッシュ」とシモネッティの「マドリガル」を両面に収めた問題のレコード。何が問題なのか。このレコードの片面にはキュルティの代名詞と言うべき「チャルダッシュ」、その裏面に「マドリガル」が入っているのですが、おそらく、レコードが再プレスされたときに「マドリガル」だけ別の録音に差し替えられているのです!(上の画像はHさん所蔵盤とは異なります)
 
<曲名>
マドリガル(シモネッティ)
 
<演奏>
イヴォンヌ・キュルティ(ヴァイオリン)、G.van.パリス(ピアノ)
【1929年頃録音、Columbia D19041・5290・J704ほか、マトリクス番号L870】
 
当盤【L870】が最初に発売されたレコードで、過去記事で紹介した【WL2549】は同じカタログ番号のマトリクス違いです。この2つが同じ演奏でないことは明らかです。【L870】はピアノに対してヴァイオリンの音量が小さく、弱音器を付けて弾いているようです。また、途中の繰り返しの有無に違いがあり、【WL2549】のほうが演奏時間が長くなっています。いわゆる「別テイク」ではなく、【WL2549】は再プレスの際に何らかの理由で録り直しをした演奏かもしれません。
 
キュルティの演奏はどちらも自由奔放ですが、【WL2549】のほうが二人の合奏が板に付いており、レコード以外にも共演を重ねていたことを想像させます。また、キュルティの弾きぶりも人間的な成熟、母性のようなものを感じます。この数年のうちに私生活上の変化があったことすら想像させます。この新旧両盤を所蔵していらっしゃるHさんには恐れ入りました。Hさんはこの他にもキュルティを数枚お持ちとのこと。またいつか、キュルティに会えることが今から楽しみです。
 
♪画像をアルゼンチン盤からイギリス盤に変更しました。キュルティ(Curti)の名前の綴りが違うのは英語風なのでしょうか、単なる誤記でしょうか。なお、YouTubeの音源は日本盤と思われます。

マドリガル(シモネッティ)

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<曲名>
マドリガル(シモネッティ)
 
<演奏>
イヴォンヌ・キュルティ(ヴァイオリン)、G.van.パリス(ピアノ)【Columbia 5290(マトリクスWL2549)】
[裏面の「チャルダッシュ」と合わせて、ポンちゃんさんの記事でお聴きいただけます]
 
魅惑のパリジェンヌ(たぶん)、イヴォンヌ・キュルティ。チャーミングなヴィブラートとポルタメント、彼女の個性はフォーレの「子守歌」(前回紹介)で全開です。そして「マドリガル」も実にいい。この絶妙なルバートがあらかじめ設計された表現とは思えない、天性の音楽センスを感じます。
 
キュルティとはいったい何者なのか?彼女のレコードで伴奏を務めたピアニストは次の5人です。寡聞にして一人も知りません。
 
<キュルティの伴奏者>
ゴドフロイ・アンドルフィ Patheの全録音
モーリス・フォーレ 5曲
G.van.パリス 4曲
J.ベンヴェヌティ 4曲
リュシアン・プティジャン 2曲
 
しかし、このピアニストたちが共演している他のヴァイオリニストを調べてみると、錚々たる顔ぶれです。
 
<キュルティと共演した伴奏者と共演したヴァイオリニスト>(生年順)
○ウィリアム・カントレイユ(1888~?) G.アンドルフィと共演歴あり
○アンリ・メルケル(1897~1969) G.アンドルフィ指揮パリ音楽院管弦楽団と共演歴あり
○ガブリエル・ブイヨン(1898~1984) M.フォーレと共演歴あり
○ルネ・ベネデッティ(1901~1975) M.フォーレ、J.ベンヴェヌティと共演歴あり
○ローラン・シャルミー(1908~1959) L.プティジャンと共演歴あり
○ジャン・シャンペイユ(1910~?) L.プティジャンと共演歴あり
○リュシアン・シュヴァルツ(?~?) L.プティジャンと共演歴あり
 
というわけで、パリ音楽院の教授やパリの主要楽団のコンサートマスターがズラリ。全員、パリ音楽院の出身です。キュルティはなぜこんなパリの実力者たちと組むようなピアニストと共演できたのでしょうか。このように外堀を埋めてみると、キュルティ自身もやはりパリ音楽院の関係者と考えるのが自然と思えます。
 
また、1920年代後半のものと推定されるキュルティの写真(前回記事参照)は推定20~30歳くらい。逆算すると1900年前後の生まれでしょうか。ということは、前述のヴァイオリニストたちとまさに同世代。1920年頃のパリ音楽院の卒業生名簿を調べたら、名前が見つかるでしょうか。あるいは、最近まで存命だったブーシュリ教授(1877~1962)の未亡人ドゥニーズ・ソリアーノ(1916~2006)であれば、彼女の消息を何かしら知っていたでしょうか。こんなに聴き手(ぼく)を魅了するヴァイオリニストなのに、判らないことだらけとはもどかしい。(←調べろよ。)
 
キュルティの追跡は、ぼくのライフワークなのです。(←SP買えよ。)

子守歌(フォーレ)

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イヴォンヌ・キュルティ。
 
フランスの女性ヴァイオリニスト。生没年不詳、経歴不詳。1920~30年代にかけて数十枚のSPレコードを残す。3~4分程度の小品ばかりで、クラシックのほか当時最新のオペレッタやミュージカルのヒットナンバーも数多く含まれる。現在、ほとんど無名。
 
しかし、キュルティこそ、ぼくの憧れの人なのです。
 
<曲名>
子守歌(フォーレ)
 
<演奏>
イヴォンヌ・キュルティ(ヴァイオリン)、ゴドフロイ・アンドルフィ(ピアノ)
https://www.youtube.com/watch?v=FZOrAgbfoSQ (2分59秒)
セクシーで頭が切れて、でも可愛くて…そんな女性を魅力的と思わぬ男はいないであろう、まさにそんなイメージの演奏である。(上杉春雄)
この上杉春雄さんのキュルティ評はモンティの「チャルダッシュ」について書かれたものですが、モンティよりもフォーレにこそ、この言葉を贈りたい。ハートをくすぐるヴィブラートと、幸せがあふれてこぼれ落ちるようなポルタメント。決して、フェロモンまき散らす濃厚な官能美ではない。センス良くオシャレな着こなしで颯爽と街を歩く女性が、すれ違いざまに上品な香りをふわっと漂わせてくると、素敵な人だなぁ…とドキっとする。10代の頃、年齢差以上に大人に見えて手が届かなかった20代の女性のような。そんなトキメキのヴァイオリン。
 
惚れても知りませんよ。
 
最終更新日:2016年1月1日

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