イントラーダ(デプラーヌ)

<曲名>
イントラーダ(デプラーヌ)
デプラーヌ Jean-Antoine Desplanes(1678~1757)は、本名をGiovanni Antonio Pianiというヴァイオリンの名手。イタリアのナポリに生まれたが、フランスの海軍長官トロサ伯に仕え、1721年からオーストリア宮廷付独奏家としてウィーンを中心に活躍した。<イントラーダ>(導入曲)は、1712年に彼がパリで作曲した12曲のヴァイオリン・ソナタ中の1楽章で、ヨアヒムとレオナールに師事したブダペスト出身のヴァイオリニスト、ナッシェ Tivadar Nachéz (本名Theodor Naschitz, 1859~1930)の編曲で有名になった。(藁科雅美)
往年の名ヴァイオリニスト、ジャック・ティボー(1880~1953)が愛奏した「イントラーダ」は現代のヴァイオリニストたちのレパートリーからはほとんど脱落してしまったけど、わずか3分間のうちにドラマを感じさせる情熱的な小品で、ぼくはこれを名曲だと主張することに何のためらいもない。でも、これがバロックだなんて、本当なのか。これの原曲を聴いたことがないし、そもそもデプラーヌなる作曲家の他の作品を見かけたことすらない。
 
編曲者ナッシェもヴァイオリニストで、彼の演奏は自作自演2曲とシューマンの「トロイメライ」、このわずか3曲のみレコードに残されている(と、ibotarow先生からつい先週教えていただいたことを昔から知っていたように書く)。ナッシェの名前もそんなに有名ではないかもしれないけど、スズキメソードのヴィヴァルディの協奏曲はこの人の編曲。特にト短調は大胆にロマンチックに和声を組み替えた名編曲で、ぼくはそれを原曲の魅力を超えていると主張することに何のためらいもない。だからデプラーヌも、自分が知らないという理由で原曲の存在を疑うことはためらいを感じてしまうのである。
 
<演奏>
ジャック・ティボー(Vn),Madame Adami(Pf)【旧録音】
ジャック・ティボー(Vn),タッソ・ヤノポーロ(Pf)【再録音】
 
<ディスコグラフィ>
(録音年代順)
【1924年】ジャック・ティボー(Vn), Madame Adami(Pf)[BIDDULPH](1924年10月21日、10月31日、11月1日録音)
【1933年】ジャック・ティボー(Vn), タッソ・ヤノポーロ(Pf)[EMI, APR](1933年7月2日録音)
【1935年頃】ゲオルグ・クーレンカンプ(Vn), ピアノ伴奏[PODIUM]
【1928~1937年頃】モーリス・マレシャル(Vc)[東芝EMI/山野楽器]
【1930年代】ミハイル・フィヒテンホルツ(Vn), アブラム・ディヤコフ(Pf)[RCD]
【1952年】ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn), ハンス・プリグニッツ(Pf)[DG](1952年4月録音)[異説あり:1952年1月6~7日録音]
【1960年】Kees Cooper(Vn), Paul Ulanowsky(Pf)[20th Century-Fox(SFX4006)]
【1963年発売】ルジェーロ・リッチ(Vn), レオン・ポマーズ(Pf)[DECCA原盤]≪クレモナの栄光≫
【1964年】アンドレ・ナヴァラ(Vc), モーリス・デュリュフレ(Org)[French Vogue原盤(CLVLX 361)/グリーンドア, Spectrum復刻]
【1974年】フェリックス・アーヨ(Vn), エドゥアルト・オガンド(Pf)[PHILIPS] (1974年4月9~18日録音)
【1981年】ローラ・ボベスコ(Vn), ジャック・ジャンディ(Pf)[PHILIPS] (1981年9月9~19日録音)
【2000年】吉田弘子(Vn), 小森谷裕子(Pf)[virgo](2000年4月10~11日録音)
【調査中】Nathaniel Rosen(Vc), Doris Stevenson(Pf)[John Marks Records]
 
最終更新日:2016年12月30日
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メサイア(ヘンデル)

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<曲名>
オラトリオ「メサイア」第2部~ハレルヤ(ヘンデル)
 
<演奏>
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団&合唱団【1964年録音、EMI】
 
母が若い頃、3兄妹で小遣いを出し合って買ったという箱入り全曲盤レコード。これをぼくが中学生のときに母の実家で見つけて、従姉妹(クラシックに興味なし)に頼み込んでカセットにダビングしてもらったら、なんと45回転で再生
世界広しと言えども、メサイア初体験がクレンペラーの高速バージョンだったのはおそらくL氏だけでは、と自負しております。その後、ちゃんと33回転でやり直してもらって、今もそのカセットで聴いています。(2011年当時。その後、レコードで聴けるようになりました)
 
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<演奏>
サー・トマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィル&合唱団【1959年録音、RCA】
 
ユージン・グーセンス編曲版のえげつなさときたら…。ユージン・グーセンスと言えば、あの、空港の税関でエッチな写真集を没収されて有名になった人ですよね。さすが肉食系のメサイア!ぼくは典型的な草食系男子なので、こういうのが…たまりません
(2011年当時。その後もぼくは草食系です)
 
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<演奏>
WTC声楽隊(WTC:世界タコヤキ委員会)
全国のたこやき屋さんへ
「たこやきハレルヤ」は日本はもとより全世界のたこ焼き屋さん&たこ焼きを扱う業者様が店先やスーパー等で流せる曲として製作していますので、ドンドン使って頂ければと思います(株式会社ラプレ)
道頓堀のたこ焼き屋さんの店頭でエンドレスで流れていた、上海万博・日本産業館「大たこ看板」公式ソング。ぼくはバカバカしいことを真剣にやる人が大好きです。原曲を極力生かそうとする明らかな意思にヘンデルへのリスペクトを感じないわけにはいかない。グーセンス編曲版とは違う意味で衝撃のハレルヤ
 
なお、クレンペラー盤とビーチャム盤の上記本文はちょうど4年前(2011年12月23日)、飲み仲間のHさんの記事にぼくが書いたコメントの転用です(つまり手抜き)

コンチェルト・ソナタ(ヴェラチーニ)/ローラ・ボベスコ

先週の土曜はPちゃんさんとともにibotarow先生のご自宅におじゃまして、レコード三昧の6時間。こちらは座ったまま飲んで食べて聴いての至福のひととき、先生は取っ替えひっかえレコードをかけてくださる労働のひととき。いつもながら、申し訳ございません
 
(今回聴かせていただいたレコード)【順不同】
ヴァイオリン・ソナタ ホ短調(ヴェラチーニ)~全楽章 ボベスコ(Vn)[同演異盤3種類の聴き比べ]
ヴァイオリン・ソナタ ホ短調(ヴェラチーニ)~第3楽章&第4楽章 ティボー(Vn)★
リゴレット・パラフレーズ(リスト) パハマン(Pf)★
ヴァイオリン協奏曲第1番(バッハ)~全楽章 ボベスコ(Vn&指揮)
ブランデンブルク協奏曲第5番(バッハ)~第1楽章 リステンパルト指揮[新旧録音の聴き比べ]
合奏協奏曲作品6-6(ヘンデル)~全楽章 リステンパルト指揮
フルート協奏曲第1番K313(モーツァルト)~第1楽章 ランパル、リステンパルト指揮▲[日仏両盤の聴き比べ]
ヴァイオリン協奏曲第6番K268(モーツァルト)~第1楽章 バルヒェット(Vn)▲
管楽器のための協奏交響曲K297b(モーツァルト)~第1楽章 リステンパルト指揮
交響曲第39番K543(モーツァルト)~全楽章 リステンパルト指揮
グラスハーモニカ五重奏曲K617(モーツァルト) リリ・クラウス(チェレスタ)ほか
ピアノ、クラリネット、ヴィオラのための三重奏曲K498(モーツァルト) リリ・クラウス(Pf)ほか
★=ポンちゃんさん持参のSPレコード
▲=Loree持参のLPレコード(ランパルは日本盤)
 
というわけで、偶然にも(?)ヴェラチーニのソナタのこと(前回記事)を書いたその日にボベスコの同演異盤を3枚、さらに偶然は重なり(?)、PちゃんさんもティボーのSPを持参してくださって、計4枚の聴き比べをさせていただきました。
 
ボベスコのオリジナル盤はベルギーのAlphaというレコード会社だそうですが、同じ演奏が様々な国でプレスされ、様々なカタログ番号で発売されています(下記参照)。先後関係は不明です。のちに日本コロムビアから発売されたレコードも合わせて、聴かせていただいたのは■印の3枚です。
ベルギーAlpha DB177[ベルギー製]
ベルギーAlpha DB177 [英DECCA製、MONO](SpectrumからCD復刻)
ベルギーAlpha DB177 [英DECCA製、STEREO]■
ベルギーAlpha CL3008 [フランス製、MONO]■
ベルギーAlpha CL4008 [フランス製、STEREO](グッディーズからCDR復刻)
日本コロムビア NCC-8003-AX [日本製、STEREO]■
(すべてLPレコード)
ぼくは以前から「再生音」の違いを聴き分ける能力がないと自認していて、レコードのプレスとかオーディオには無頓着ですが、この3枚のボベスコの色合いの違いはそんなぼくの耳でも一聴しただけで明らか!焼き鳥の塩とタレくらいの違いと言っても過言ではない。詳しくはibotarow先生の記事「ボベスコのl'age d'or du violon」をご参照下さい(→ http://ibotarow.exblog.jp/21976148/ )。
 
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<曲名>
ヴァイオリン・ソナタ ホ短調(ヴェラチーニ)
 
<演奏>
ローラ・ボベスコ(Vn), ジャック・ジャンティ(Pf)【1962年録音】
第1楽章 Ritornello
第2楽章 Allegro con fuoco
https://www.youtube.com/watch?v=GCwOO5NAmoY
第3楽章 Menuet e gavotta
第4楽章 Giga
https://www.youtube.com/watch?v=XiOcKOVA9YM
 
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テイチク(CD) https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-10-4988004011603
Spectrum(CD) http://www.amazon.co.jp/dp/B00KKCCCD6
goodies(CDR) http://shinshuu.com/dsda/index.php?f=&ci=10026&i=300539
 
ぼくがこの演奏を初めて聴いたのは3年前。PスピエさんからCDをいただき、ボベスコの華奢ながらも伸びやかでチャーミングなヴァイオリンに魅了されたのでした。そしてなんと!同じ日本コロムビア盤をibotarow先生から些少の缶ビールと「等価交換」していただきました(本当は明らかに「不等価」ですが、そう書けと言われました)。この演奏をレコードでも聴けるようになって、感激です
 
演奏はダーフィト編曲系の4楽章構成。しかし、ジャンティのピアノは必ずしもダーフィト版に忠実ではなく、第1楽章の前奏などドラマチックでダイナミックなピアノ独奏を両手のユニゾンに変更しているので、ダーフィト版を聴き慣れた人は肩透かしを食らうでしょう。彼はおそらく、あれはいくらなんでもバロック離れしているし、ボベスコのヴァイオリンを引き立てるためにピアノは抑え気味でいいと思ったのかもしれません。それは一つの見識と言うべきです。なお、ボベスコとジャンティは夫婦で、のちに離婚したそうです。なぜ離婚したのでしょうか。この録音当時はどうだったのでしょうか。知りません
 
この演奏の録音年については情報が錯綜していますが、ここでは1962年説を信じます。これまでに市場に出たCDは、テイチク(1989年発売)、Spectrum(昨年発売)、goodiesのCDR(今年発売)があり、最も入手容易なのはSpectrumですが、これは要注意。使用原盤はモノラルで、それはよいのですが、曲ごとにピッチが変わり、日本コロムビア盤と比べるとヴェラチーニの音はほぼ半音低く、ヘンデルのソナタはさらに低い。謎です。
 
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<演奏>
ローラ・ボベスコ(Vn), 岩崎淑(Pf)【1983年3月2日録音(Live)】
第1楽章 Fantasia, Largo
第2楽章 Allemanda
第3楽章 Pastorale
第4楽章 Gigue
TDKコア(CD) http://www.amazon.co.jp/dp/B000JFZ93O
TOKYO FM(CD) http://www.amazon.co.jp/dp/B00Z98JIPG
TOKYO FM(LP) http://www.amazon.co.jp/dp/B00RGE9Q6W
 
エフエム東京によって収録された来日公演。当盤(TDKコア)のジャケットには「ヴァイオリン・ソナタ ホ短調(ヴァイオリンと通奏低音のためのアカデミック・ソナタ集op.2より第8番)」、さらに解説書では「組曲op.2-8」と記載され、曲名が錯綜しているうえ、各楽章の表記も通常とまったく異なります。謎です。
 
ベルギーAlpha(及び日本コロムビア)の録音から約20年経過して失われたものもありますが、ライヴの感興、勢いと思い入れは多少の綻びをカバーして余りある。なんと、この演奏は今年になってレコードでも発売されました。聴いてみたいけど、3枚組24000円。高い

「ヴェラチーニのコンチェルト・ソナタ」完全攻略ガイド

<曲名>
「コンチェルト・ソナタ」ホ短調(ヴェラチーニ)
第1楽章 原曲:作品2-8(ホ短調)の第2楽章 Largo e staccato(Ritornello)
第2楽章 原曲:作品2-8(ホ短調)の第1楽章 Allegro
第3楽章 原曲:作品2-11(ホ長調)の第4楽章 Menuet~Gavotte~Menuet da Capo
第4楽章 原曲:作品2-8(ホ短調)の第3楽章 Giga
-原曲の出典はいずれも「12のアカデミック・ソナタ」作品2
 
フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ(1690~1768)の名前に反応する人には3つのタイプしかいません。それは「古楽愛好家」「ヴァイオリンレコード愛好家」そして「ヴァイオリン学習者」です。全国のヴァイオリン少年少女があこがれるのはホ短調ソナタです。
 
しかし、このホ短調ソナタは単に「ヴァイオリン・ソナタ」という名称はもちろん、「アカデミック・ソナタ」「コンチェルト・ソナタ」と表記されることもあり、曲名が錯綜しているうえ、今日一般的に使われるのは複数のソナタを原曲とする編曲版で、その編曲にも複数あることが状況を複雑化させています。そんなわけで、レッスンで弾くことになってお手本にするために買ってきたCDはまったく趣の違う演奏だった、ということが大いにあり得ます。
(「12のアカデミック・ソナタ」作品2について)
この「アカデミック」には多少、注意が必要かもしれない。ここで言う「アカデミック」は「学術的な」ではなく、「アカデミー(愛好家向けの非公開演奏会)のための」ということを意味している。また「愛好家」というのも少し厄介で、ここでは一般のファンではなく、音楽に深く通じた階層を指す。(澤谷夏樹、前回紹介アルバム:桐山建志『ヴァイオリン音楽の泉』の解説より)
世界中で、多くの子供たちがヴァイオリンを学ぶ才能教育、スズキ・メソード。
(中略)『指導曲集第5巻』に収録されているヴェラチーニのジーグは、作品2-7の終楽章。また、『指導曲集第8巻』のコンチェルト・ソナタは、作品2-8の第1、第2楽章の順番を入れ替え、第3楽章ジーグの前に作品2-11のメヌエットとガヴォットを加えて、19世紀にメンデルスゾーンの友人ダーフィトによって編曲されたものです。(桐山建志:同上)
1744年版(リンク先のCompleteのSonatas VI-XII and CanoneのP.17~22, P.38)
http://imslp.org/wiki/12_Sonate_accademiche,_Op.2_(Veracini,_Francesco_Maria)
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フェルディナント・ダーフィト版(リンク先のVolume1のComplete ScoreのP.84~99)
http://imslp.org/wiki/Die_hohe_Schule_des_Violinspiels_(David,_Ferdinand)
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ヨゼフ・サルモン版
 
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○ディスコグラフィ
(原曲)
【1973~74年】フェリックス・アーヨ(Vn), マリア・テレサ・ガラッティ(Cem), マリオ・チェントゥリオーネ(Vc)[PHILIPS](1973年12月26日~1974年1月7日録音)★★
【1993年】「ロカテッリ・トリオ」こと Elizabeth Wallfisch(Vn), Richard Tunnicliffe(Vc), Paul Nicholson(Cem&Org)[Hyperion](1993年6月25~30日録音)★★
【1995年】ファビオ・ビオンディ(Vn), マウリツィオ・ナッデオ(Vc), リナルド・アレッサンドリーニ(Cem), パスカル・モンテイレ(テオルボ)[Opus111]★
【1995年】エンリコ・ガッティ(Vn), アラン・ジェルブロ(Vc), グイド・モリーニ(Cem)[ARCANA]★
【2012年】エンリコ・オノフリ(Vn), アレッサンドロ・パルメリ(Vc), リッカルド・ドーニ(Cem)[Anchor Records](2012年7~8月録音)★
【2014年】桐山建志(Vn), 大塚直哉(Cem)[ALM RECORDS](2014年9月17~19日録音)★★
★★=作品2-8と作品2-11を両方含む。
★=作品2-8を含むが、作品2-11は含まない。
 
(編曲版)
【1920年前後?】リッコ・アマール(Vn), ギュンター・ラミン(Cem)[新星堂/EMI, Schalplatten&Shellac]▽
【1924年】ジャック・ティボー(Vn), Harold Craxton(Pf)[BIDDULPH](1924年11月13日録音)▲
【1936年】ジャック・ティボー(Vn), タッソ・ヤノポーロ(Pf)[EMI](1936年5月27日録音)▲
【1939年】アレクサンドル・モギレフスキー(Vn), アレクシス・アバサ(Pf)[WING DISC, グッディーズ]■
【1957~58年】モーリス・アンドレ(Tp), ジャン=フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団▽
【1960年頃?】M・コミサロフ(Vn), T・フィドラー(Pf)[ETERNA]▽
【1962年】ローラ・ボベスコ(Vn), ジャック・ジャンティ(Pf)[テイチク, Spectrum, グッディーズ]■
【1965年】豊田耕兒(Vn), 豊田元子(Pf)[VICTOR](1965年1月録音)■
【1967年頃?】スティーヴン・スターリク(Vn), ケネス・ギルバート(Cem)[日本コロムビア(LP)]■
【1974年以前】豊田耕兒(Vn), 辛島輝治(Pf)[Columbia]≪スズキメソード・ヴァイオリン指導曲集Vol.8≫
【1983年】ローラ・ボベスコ(Vn), 岩崎淑(Pf)[TDKコア, TOKYO FM](1983年3月2日録音)■
【1993年】堀米ゆず子(Vn), ヴォルフガンク・マンツ(Pf)[SONY](1993年10月4~5日録音)▲
【2005年】島根恵(Vn), 遠藤直子(Pf)[ALM RECORDS](2005年8月録音)■
【2007年】天満敦子(Vn), 吉武雅子(Pf)[セブンシーズ](2007年4月9~10日,12日録音)■
【2008年】西崎崇子(Vn), テレンス・デニス(Pf)[NAXOS](2008年4月23~27日録音)≪スズキ・エバーグリーン第7集≫
■=全4楽章
▲=第3楽章&第4楽章のみ
▽=その他(または調査中)

「エックレスのソナタ」完全攻略ガイド

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<アルバムタイトル>
ヴァイオリン音楽の泉 18世紀イタリアの名手たち
 
<曲名>
ヴァイオリン・ソナタ第11番ト短調(エックレス)
第1楽章 Largo
第2楽章 Corrente. Staccato Allegro
第3楽章 Adagio
第4楽章 Presto
 
<演奏>
「大江戸バロック」
桐山建志(バロックヴァイオリン)、大塚直哉(チェンバロ)
【2014年9月17~19日録音(2015年7月7日発売予定)、ALM RECORDS】
http://www.kojimarokuon.com/disc/ALCD1152.html
http://www.amazon.co.jp/dp/B00ZYCLIAA (試聴できます)
 
ヴァイオリン学習者にはおなじみの「エックレス」ことヘンリー・エクルズ(Henry Eccles、1675年頃~1745年頃)はイギリスの音楽一家出身で、イギリス国王の私設楽団やフランス宮廷礼拝堂のヴァイオリン奏者を歴任した人物だったらしい(フェリックス・アーヨ盤、竹内康夫さんの解説による)。エックレスはイタリア人ではないけど、「イタリアのヴァイオリン音楽から影響を受けた名手」という意味での選曲と思われます。
 
古くはヨゼフ・サルモン(1864~1943)の編曲版を弾いたジャック・ティボーの録音で知られ、その原曲は1720年にパリで出版された「12のヴァイオリン・ソナタ」に含まれる…と、まことしやかに語られてきましたが、それにしてはバロックヴァイオリン奏者は誰も取り上げないし、いくら編曲版とはいえロマンチックすぎるし、そもそもエックレスの曲はこれ以外まったく演奏されないし、ひょっとしたらサルモンによる贋作なのでは!?と、長らく疑っていたのですが、その後、1720年の初版譜(※)を見て、確かに原曲は実在したのだと納得するに至りました。サルモン、疑ってごめん。でも、第2楽章は他人の作品からの引用らしい。
この曲集のうち18の楽章が、ジュゼッペ・ヴァレンティーニ(1680ころ~1759以降)の「魅力ある室内ソナタ」作品8から、1つの楽章がボンポルティの「ヴァイオリンと通奏低音のためのインヴェンション」作品10から取られている。エクルズは、ボンポルティの「インヴェンション第4番」の終楽章を、自作の「ソナタ第11番」の第2楽章に引用している。現代人の目には剽窃まがいに映るこうした行為も、当時の習慣に基づけば「表敬」のひとつと言える。(澤谷夏樹、当盤の解説書より)
 
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<リリース記念コンサート>
【日時】2015年7月5日(日)16時~
【場所】ギャラリー鶉(目白)
【曲目】CD収録曲全曲
 
本日2回公演(13時~、16時~)の2回目を聴く。わずか30数席のギャラリーの最前列中央、手を伸ばしたら桐山さんの譜面台に手が届く至近距離なのに、不思議なことに直接音をほとんど感じることなく、小さな空間を満たす柔らかいバロックヴァイオリンの音色を堪能しました。桐山さんの譜面台にあったエックレスの楽譜を(許可を得て)見せていただいたところ、まさに同じもの。これぞ待望、後世のロマンチックな編曲に拠らない、バロックヴァイオリンによる演奏はおそらく世界初録音!(Loree調べ)
 
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<参考>
マグヌス・ローゼン(エレキベース)【2008年録音、NAXOS】
http://ml.naxos.jp/album/8.572650
 
エックレスのソナタは他の弦楽器の学習者にとっても定番らしく、かくいうぼくもこの曲を知ったきっかけは小学生のときに父(チェロ)の伴奏をさせられたことでした。さらにコントラバス界ではおそらくチェロ以上に人気曲で、古くはクーセヴィッキーから21世紀では北欧のヘヴィメタ・バンド「ハンマーフォール」のベーシスト、マグヌス・ローゼンまで、多少の手間では網羅できないくらいの録音がありそうなので、ディスコグラフィをつくるのはやめました
 
ヴァイオリンによる録音のみ、気づいたときに書き留めることにします。
 
(ヴァイオリンによる主な録音)
【1930年】ジャック・ティボー(Vn),タッソ・ヤノポーロ(Pf)[EMI](1930年4月25日録音)
【1965年】豊田耕兒(Vn),豊田元子(Pf)[VICTOR](1965年1月録音)
【1970年代?】豊田耕兒(Vn),辛島輝治(Pf)[全音楽譜出版社/Columbia]≪スズキメソード・ヴァイオリン指導曲集Vol.8≫
【1974年】フェリックス・アーヨ(Vn),エドゥアルド・オガンド(PF)[PHILIPS](1974年4月9~18日録音)
【1980年】海野義雄(Vn),渡辺康雄(Pf)[SONY](1980年2月19~20日録音)
【1993年】ヨゼフ・スーク(Vn),Aleš Bárta(Org)[Lotos](1993年9月録音)
【1996年】天満敦子(Vn),小森谷裕子(Pf)[アート・ユニオン](1996年9月17~18日録音)
【2005年】島根恵(Vn),遠藤直子(Pf)[ALM RECORDS](2005年8月16~17日録音)
【2014年】桐山建志(Vn),大塚直哉(Cem)[ALM RECORDS](2014年9月17~19日録音)
【不明】篠崎功子(Vn)、長与咲子(Pf)[fontec]≪新しいバイオリン教本Vol.4≫(小森谷裕子のカラピアノ付き)
 
前回更新日:2015年7月5日
最終更新日:2016年10月22日

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