2016/11/05
イントラーダ(デプラーヌ)
<曲名>
イントラーダ(デプラーヌ)
デプラーヌ Jean-Antoine Desplanes(1678~1757)は、本名をGiovanni Antonio Pianiというヴァイオリンの名手。イタリアのナポリに生まれたが、フランスの海軍長官トロサ伯に仕え、1721年からオーストリア宮廷付独奏家としてウィーンを中心に活躍した。<イントラーダ>(導入曲)は、1712年に彼がパリで作曲した12曲のヴァイオリン・ソナタ中の1楽章で、ヨアヒムとレオナールに師事したブダペスト出身のヴァイオリニスト、ナッシェ Tivadar Nachéz (本名Theodor Naschitz, 1859~1930)の編曲で有名になった。(藁科雅美)
往年の名ヴァイオリニスト、ジャック・ティボー(1880~1953)が愛奏した「イントラーダ」は現代のヴァイオリニストたちのレパートリーからはほとんど脱落してしまったけど、わずか3分間のうちにドラマを感じさせる情熱的な小品で、ぼくはこれを名曲だと主張することに何のためらいもない。でも、これがバロックだなんて、本当なのか。これの原曲を聴いたことがないし、そもそもデプラーヌなる作曲家の他の作品を見かけたことすらない。
編曲者ナッシェもヴァイオリニストで、彼の演奏は自作自演2曲とシューマンの「トロイメライ」、このわずか3曲のみレコードに残されている(と、ibotarow先生からつい先週教えていただいたことを昔から知っていたように書く)。ナッシェの名前もそんなに有名ではないかもしれないけど、スズキメソードのヴィヴァルディの協奏曲はこの人の編曲。特にト短調は大胆にロマンチックに和声を組み替えた名編曲で、ぼくはそれを原曲の魅力を超えていると主張することに何のためらいもない。だからデプラーヌも、自分が知らないという理由で原曲の存在を疑うことはためらいを感じてしまうのである。
<演奏>
ジャック・ティボー(Vn),Madame Adami(Pf)【旧録音】
ジャック・ティボー(Vn),タッソ・ヤノポーロ(Pf)【再録音】
<ディスコグラフィ>
(録音年代順)
【1924年】ジャック・ティボー(Vn), Madame Adami(Pf)[BIDDULPH](1924年10月21日、10月31日、11月1日録音)
【1933年】ジャック・ティボー(Vn), タッソ・ヤノポーロ(Pf)[EMI, APR](1933年7月2日録音)
【1935年頃】ゲオルグ・クーレンカンプ(Vn), ピアノ伴奏[PODIUM]
【1928~1937年頃】モーリス・マレシャル(Vc)[東芝EMI/山野楽器]
【1930年代】ミハイル・フィヒテンホルツ(Vn), アブラム・ディヤコフ(Pf)[RCD]
【1952年】ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn), ハンス・プリグニッツ(Pf)[DG](1952年4月録音)[異説あり:1952年1月6~7日録音]
【1960年】Kees Cooper(Vn), Paul Ulanowsky(Pf)[20th Century-Fox(SFX4006)]
【1963年発売】ルジェーロ・リッチ(Vn), レオン・ポマーズ(Pf)[DECCA原盤]≪クレモナの栄光≫
【1964年】アンドレ・ナヴァラ(Vc), モーリス・デュリュフレ(Org)[French Vogue原盤(CLVLX 361)/グリーンドア, Spectrum復刻]
【1974年】フェリックス・アーヨ(Vn), エドゥアルト・オガンド(Pf)[PHILIPS] (1974年4月9~18日録音)
【1981年】ローラ・ボベスコ(Vn), ジャック・ジャンディ(Pf)[PHILIPS] (1981年9月9~19日録音)
【2000年】吉田弘子(Vn), 小森谷裕子(Pf)[virgo](2000年4月10~11日録音)
【調査中】Nathaniel Rosen(Vc), Doris Stevenson(Pf)[John Marks Records]
最終更新日:2016年12月30日