2014/11/02
シャコンヌ(ヴィターリ)/エドゥアルト・メルクス
<曲名>
シャコンヌ(ヴィターリ)
<演奏>
エドゥアルト・メルクス(Vn)
ライオネル・サルター(Org)、カール・シャイト(Lute)、アルフレート・プラニヤフスキー(Cb)
【1971年1月26~29日録音、ARCHIV】
https://www.youtube.com/watch?v=qC8hdDsIOCE (11分32秒)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005FDAZ (試聴できます)
http://tower.jp/article/feature_item/2013/08/05/1101 (メルクスBOX)
ヴィターリのこの曲は、よくよく考えてみると、ふしぎな位置にある。荘厳な感じではあるが宗教色は希薄であり、詩的でも散文的でもない。響きの交差をヴァイオリンは縫ってゆき、ときにはなまなましく、ときには装飾的になる。音の織物と呼ぶには、実体がありすぎる。なにか別な空間を想ったほうがよさそうなのだが、私には適切なことばが見つからない。もしかしたら天上の風景かもしれない。[推薦盤:エドゥアルト・メルクス](宮城谷昌光「クラシック 私だけの名曲1001曲」新潮社、2003年)
オーストリアのヴァイオリニストとして、今日特に知られているのは、ウィリー・ボスコフスキー、ヴォルフガング・シュナイダーハン、及び早くから演奏の名手、及び教育家として、両面の活動をしているエドゥアルト・メルクスである。(マルク・パンシェルル/大久保和郎訳「ヴァイオリン」、白水社、1967年)
この曲にはいくつかの版があるが、ここではメルクス自身がドレスデンの手稿譜をもとに自作した通奏低音の具現や装飾音によって演奏されている。(戸口幸策・黒川孝文、CD解説書より)
ぼくが初めて聴いたヴィターリはヘンリク・シェリングでした。そして何を隠そう、初めて自分で買ったのはメルクス。中学3年のとき(1989年)に買ったこのCDはヴィターリのほか、皆川達夫先生が推薦しているタルティーニの「悪魔のトリル」とコレッリの「ラ・フォリア」も入っていて、お買い得だったのです

しかし、メルクスのヴィターリには驚きました。それまで聴いていたピアノ伴奏のシェリングとは違って、メルクスは復古的なスタイルで演奏する人だということは知っていましたが、芸風だけじゃなくて弾いている音符もかなり違う。それで解説書を読んで、ぼくは初めてこの曲に様々な「版」があることを知った。
メルクスについては、ボスコフスキーやシュナイダーハンと並べたパンシェルル評よりも「品のいい落ち着いた古雅という言葉がぴったりなヴァイオリン」というパス●エさん評に共感します。ぼくはアルムッツィ(前回紹介)を素朴だと書きましたが、メルクスに比べたらアルムッツィもずいぶん訴えかける力が強いヴァイオリンということになる。絶対評価は難しい。
メルクスのヴァイオリンは、楽器の特性もあるのでしょうけど、音色自体は正真正銘のすっぴん素肌、無味無臭。好みが分かれるかもしれませんが、ぼくにとってはヴィターリよりも前にヘンデルのソナタに魅了されて以来、メルクスはオンリーワンなのです。昨年発売された20枚組BOXをパ●ピエさんから教えていただいて即買いしたことは言うまでもない。