ヴァイオリン協奏曲第4番(モーツァルト)/ゆうちゃん

<曲名>
ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K218(モーツァルト)
 
ヨアヒムのカデンツァ(ゆうちゃん)
https://www.youtube.com/watch?v=RHQVeUf_yRc (2分32秒)
 
話題が前後しますが、ゆうちゃんは今年1月の発表会でモーツァルトの4番の第1楽章を弾きました(もちろんピアノ伴奏)。CDなどの解説によるとこの協奏曲には「軍隊」という通称があるそうですが、ぼくはCDやコンサートでその通称が使われている実例を見たことがなく、音楽評論家の方々が紙面を埋めるために語り継いでいる「大人の事情」による通称ではないかと疑っています。
 
それはさておき、協奏曲の楽しみの一つはカデンツァです。カデンツァとは、曲の途中でオーケストラが休止し、ソリストが無伴奏で脚光を浴びる箇所です。メンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のように、作曲者があらかじめカデンツァを書いておく場合もありますが、そうでない場合は演奏する人が自分で作曲するか、または往年の(主に19~20世紀の)名ヴァイオリニストが作曲したカデンツァを借用します(後者のほうが多い)。
 
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の場合は彼自身のカデンツァが現存せず、ヨゼフ・ヨアヒム(1831~1907)フェルディナント・ダーヴィト(1810~73)フリッツ・クライスラー(1875~1962)ヤッシャ・ハイフェッツ(1901~87)など、多くのヴァイオリニストが作曲したカデンツァが使われます。ゆうちゃんのカデンツァはヨアヒムです。
 
カデンツァは、モーツァルトの協奏曲でありながらモーツァルトのオリジナルではありませんが、ヴァイオリニストたちが愛情と創意工夫を注いで書き上げた「モーツァルトの主題による無伴奏カプリース」とも言うべきエキサイティングなオマージュです。
 
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しかし、困るのは学習者です。ヴァイオリニストによって採用するカデンツァが異なり、CDには記載されていないことが多く、誤記されている場合もあるので、レッスンで弾くことになってお手本にするために買ってきたCDはまったく別のカデンツァだった、ということが大いにあり得ます。
 
そこで、全国のヴァイオリン少年少女(ゆうちゃん含む)にとって最もスタンダードと思われるヨアヒムのカデンツァを採用している演奏を挙げます。ヨアヒム以外のカデンツァについても後日追加掲載します。(随時更新予定)
 
第1楽章でヨアヒムのカデンツァを採用している演奏
(録音年代順)
■ヨゼフ・シゲティ(Vn),サー・トマス・ビーチャム指揮ロンドン・フィル[オーパス蔵](1934年10月8日録音)
■ブロニスラフ・フーベルマン(Vn),ブルーノ・ワルター指揮Philharmonic-Symphony Orchestra[Music&Arts](1945年12月16日録音)
■ブロニスラフ・フーベルマン(Vn),ブルーノ・ワルター指揮Philharmonic-Symphony Orchestra[ARBITER](1946年5月26日録音)
■ジャック・ティボー(Vn),エドゥアルト・ファン・ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団[PHILIPS](1949年12月28日録音)
■シモン・ゴールドベルク(Vn),ワルター・ジュスキント指揮フィルハーモニア管弦楽団[TESTAMENT](1951年8月13~15日録音)
■ヨハンナ・マルツィ(Vn),オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送室内管弦楽団[DG](1952年11月3~4日録音)
■ラインホルト・バルヒェット(Vn),ロルフ・ラインハルト指揮シュトゥットガルト・プロ・ムジカ管弦楽団[LANNE](1950年代)
■ラインホルト・バルヒェット(Vn),ウィルヘルム・ゼーゲルケン指揮シュトゥットガルト・プロ・ムジカ管弦楽団[LANNE](1950年代)
■ジノ・フランチェスカッティ(Vn),ブルーノ・ワルター指揮コロムビア交響楽団[SONY](1958年12月10~17日録音)
■クリスティアン・フェラス(Vn),アンドレ・ヴァンデルノート指揮パリ音楽院管弦楽団[EMI](1960年9月20日録音)
■フランコ・グッリ(Vn),アルミン・ジョルダン指揮コレギウム・アカデミクム・ジュネーヴ合奏団[Concert Hall Society](1960年代?)
■フランコ・グッリ(Vn),ミラノ・アンジェリクム管弦楽団[Venus](1960年代?)
■ヘンリク・シェリング(Vn),アレキサンダー・ギブソン指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団[PHILIPS](1970年1月録音)
■ローラ・ボベスコ(Vn),エドガー・ドヌー指揮イザイ・アンサンブル[TALENT](1976年録音)
■オスカー・シュムスキー(Vn),ヤン・パスカル・トルトゥリエ指揮スコットランド室内管弦楽団[Nimbus Records](1983年4月録音)
■オーギュスタン・デュメイ(Vn),エマニュエル・クリヴィヌ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア[EMI](1989年4月録音)
 
(注)一部改変や省略している場合があります。また、第2楽章と第3楽章のカデンツァはヨアヒムでない場合があります。
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金婚式(マリー)

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<曲名>
金婚式(マリー)
 
<演奏>
ヤン・ブルーメルス(ヴァイオリン)、ピエール・パラ(ピアノ)【1960年代前半録音、PHILIPS】
https://www.youtube.com/watch?v=K7iC8QpXnU8 (3分06秒)
パリで生まれ、スペインでなくなった作曲家ガブリエル・マリー(1852~1928)は、パリ音楽院出身の指揮者でたいへん活躍した人ですが、作品としては、サロン風の小管弦楽曲「金婚式」が僅かにマリーの名を後世に伝えるにすぎません。けれども、親しい人の結婚50周年の記念日のために作曲したと言うだけに、きわめてアンティームな明るさにあふれた曲で、いまでは小学生にまでも知られています。こうしてヴァイオリンで聴いても、そのほほえましい曲の味わいが判ると思います。(小林利之、国内盤LP解説より)
ヤン・ブルーメルスはコンセルトヘボウの第1ヴァイオリン奏者ということ以外、経歴不明。ジャック・ゲステムの数年後にPHILIPSに小品集を録音したものの、現在のレコード市場におけるこの2人の扱いは天と地の差。ゲステムのオリジナル盤は万単位の値で取引されるが、ブルーメルスはそれ以前に話題にもならない。これは180円で買った国内盤LP。ブルーメルスの「金婚式」は心地よいリズムに乗りつつ、他の奏者では印象に残らない箇所にアクセントを付けたりして、弓に曲がよくなじんでいる感じがする。世界初復刻(たぶん)。
 
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<演奏>
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)、練木繁夫(ピアノ)【1985年録音、EMI】
https://www.youtube.com/watch?v=lhLItmOs2Ig (4分15秒)
指揮者あるいは作曲家として活躍したガブリエル・マリー(1852~1928)の名は、今日、この<金婚式>と題された作品1曲だけによってのこされているといっても過言ではない。結婚50年を祝うこの行事の名が与えられていることは、なんらかの動機があったものと思われるが、明らかではない。中間部に対して、主部にある種の哀愁が感じられることは興味深い。(藤田由之、国内盤CD解説より)
今年92歳(1922年8月生まれ)にして5月にも来日していた現役最高齢ヴァイオリニスト。高校時代になけなしの小遣いをはたいて2200円で買った当盤を初めて聴いたときの失望感は忘れがたい。独特すぎる節まわしが煩わしくて、「なんで素直に弾かないんだ!」と(心の中で)叫ばずにはいられなかったが、それから10年も経たないうちにTV放送された別府アルゲリッチ音楽祭でパガニーニの協奏曲を弾く彼の姿に「これぞヴィルトゥオーゾ!」と(これも心の中で)叫ばずにはいられなかったのだから、人の感性とか価値観というものは時間とともに変化するということ。
 
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<演奏>
佐藤久成(ヴァイオリン)、鳥羽泰子(ピアノ)【2012年録音、SAKURA】
http://www.amazon.co.jp/dp/B00BHC692S (試聴できません)
https://itunes.apple.com/jp/album/violin-of-the-magical-sphere/id628305677 (試聴できます)
この広く親しまれている作品は、だれもが小学生の頃に音楽鑑賞で聴いたことがあろう。ガブリエル・マリー(1852~1928)はフランスの作曲家で、指揮者、批評家としても活躍した。「金婚式」と題され、長い年月を静かに回想するかのような音楽だが、作曲の動機や理由は明らかではない。曲は三部形式で書かれ、長調の中間部に対して、哀愁ただよう短調の主題は印象的である。(佐藤久成自身の解説より)
U野K芳先生が最近熱心にプロデュースしている佐藤久成(さとうひさや)さんは1972年生まれ。ぼくは日本経済新聞に掲載された「よみがえれ埋もれた名曲」という彼の寄稿記事(2010年11月22日付朝刊)で名前を知ったのですが、演奏は昨年、当盤発売時にゆうちゃんを連れて行ったタワレコのミニライヴで初めて聴きました。それがま~なんとも個性的な芸風で、ギトリスを連想したけど、それを上回る艶かしさと濃厚さ。もしゆうちゃんがこんなヴァイオリンを弾くようになったらぼくは動揺を抑えられない。それにしても、彼のヴァイオリンにかける情熱は凄まじく、並のマニアでは追随できないほど深い。公式サイト参照。
 
佐藤久成 公式サイトより「お勧め文献・音楽書の紹介」

ヴァイオリン協奏曲(カバレフスキー)

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旧ソ連の作曲家と言えば、プロコフィエフ(1891~1953)、ハチャトゥリヤン(1903~1978)、ショスタコーヴィチ(1906~1975)の名前が思い浮かびます。ちなみにラフマニノフ(1873~1943)、ストラヴィンスキー(1882~1971)もロシア出身ですが、欧米に亡命したので「ソ連の作曲家」として挙げるには微妙な感じがします。
 
このように並べると、カバレフスキー(1904~1987)はなんとなく影が薄い。個人的な記憶ですが、小学校の音楽室で見た音楽史年表で唯一、没年が空欄だったことが最大のインパクトと言っても過言ではありません。そんなわけで、ぼくは今も反射的に“存命”と錯覚してしまいますが、小学6年の冬(1987年1月)に亡くなっていたことを大人になってから知りました。
 
しかし、その影の薄さ(?)にも関わらず、カバレフスキーの音楽は日本中の多くの人の耳に馴染んでいます。「道化師」のギャロップ(→ https://www.youtube.com/watch?v=wGYdeXRCD1c )は、同じタイトルのレオンカヴァッロの悲劇的なオペラとは真逆の屈託ない明るさで、運動会とかTVのバラエティ番組では定番中の定番です。「道化師」が例外ではなく、カバレフスキーはこういう曲で本領を発揮する人なんだと思います。
 
<曲名>
ヴァイオリン協奏曲ハ長調(カバレフスキー)
 
<演奏>
ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
ドミトリー・カバレフスキー指揮USSR国立交響楽団【1949年録音?OMEGA CLASSICS】
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=DxF9qDKpw8Y (4分14秒)
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=ZKGDphA1bVY (6分29秒)
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=GtUYZ5Hb3og (5分26秒)
 
ゆうちゃんがヴィターリの次に弾いた曲がおもしろい。カバレフスキーのコンチェルトなんて、年季の入ったクラシック通の人が知らないと告白してもぼくは驚きませんが、「あたらしいバイオリン教本」(※)に含まれていて、全国のヴァイオリン少年少女におなじみです、間違いない。やんちゃ少年の冒険物語のように目まぐるしく動きまわる音符たちはすっかりゆうちゃんのツボにハマって、勉強中も口ずさんでいます。
 
今日のレッスンをもって全楽章仕上がったそうで、次の曲をもらってきたゆうちゃん。
 
ぼく:次は何の曲?
ゆうちゃん:「SONATE」って書いてあったよ。
ぼく:誰のソナタ?
ゆうちゃん:えっ、誰だっけ。
 
ゆうちゃん、興味をもとう(涙)
 
 あたらしいバイオリン教本 http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?code=474006

ヴァイオリン協奏曲第1番(パガニーニ)

<曲名>
ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調(パガニーニ)
 
クライスラー編曲版(前回記事)につづいて、今回は原曲をベースとした演奏を聴きます。あちこちカットした短縮版で、それ以外にも音符の改変とかありそうだから「原曲をベースとした」と控えめに書きましたが、この曲に関してそれは珍しいことではないし、細かいことは気にしません(←違いの分からない男)。なお、今回紹介するのはすべてモノラル録音です。
 
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ジノ・フランチェスカッティ(ヴァイオリン)
ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団
【1950年1月15日録音、SONY】
http://www.youtube.com/watch?v=gydE8V6I9lE (第1楽章の途中まで)
美しい音はいい。太陽のように輝く美しい音を、自分の音楽に込めて演奏したい。(ジノ・フランチェスカッティのインタビューより)
こんな明快に自分の演奏のコンセプトを語れる人がほかにいるでしょうか。また、パガニーニの第1番ほど、そのコンセプトにピッタリの曲があるでしょうか。フランチェスカッティのお父さんは、パガニーニの唯一の弟子だったカミロ・シヴォリに師事したヴァイオリニストだったそうで、つまりフランチェスカッティはパガニーニの“ひ孫弟子”というわけですが、そういう経歴にセールストーク以上の意味があるとは思いません。また、フランチェスカッティにそんな肩書きは必要ない。
 
キラキラと輝くヴァイオリンは、しかし、夏の青空のようなカラっとした音ではなく、みずみずしく、潤いがあって、ツヤもハリもあり、そして、よく歌う。8日後に録音されたサン=サーンスの協奏曲第3番(→ http://www.youtube.com/watch?v=5iwAzZ4U7wE)は美音に凄味が加わった演奏で、まさにこの時期がフランチェスカッティの絶頂期だったのかも。オーケストラも充実していて、これがステレオ録音だったらと思わずにはいられない。
 
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ルッジェーロ・リッチ(ヴァイオリン)
山田夏精指揮東京交響楽団
【1960年4月25日録音(Live)、EMI】
http://artist.cdjournal.com/d/-/1196040658
 
杉並公会堂におけるライヴ録音。何を隠そう、ぼくもこのライヴの22年後に杉並公会堂のステージに立ちました(単なるピアノの発表会とも言う)。それはさておき、これは東京交響楽団の創立50周年記念盤として1996年に発売された≪世紀の巨匠ジャパン・ライブ・シリーズ≫の中の1枚で、今回当盤を聴いたのは、≪Nicolo Paganini Discography≫(→ http://www.paganiniana.org.uk/Discography.htm)に載っていないものから選んでみました。
 
ルッジェーロ・リッチのパガニーニは、たっぷり歌うところもあるけど、そうでないところはキレのよい美音でクールにサクサク(バリバリと言うよりサクサク)と弾き飛ばし、オーケストラを振りまわすさまが楽しい。ぼくはヴィルトゥオーゾ・コンチェルトにオーケストラの完璧さを求めない。こうした雑然とした雰囲気もいい。4分を超える長大なカデンツァは、期待通り、カプリースよりも曲芸じみている。さすがリッチ!なお、指揮の山田夏精はのちに「一雄」と改名。
 
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ティボール・ヴァルガ(ヴァイオリン&指揮)
デトモルド・ティボール・ヴァルガ管弦楽団
【録音年不明(Live)、Tibor Varga Collection】
http://www.youtube.com/watch?v=mXQNBgmZMsQ (第1楽章の途中まで)
 
当盤も≪Nicolo Paganini Discography≫に載っていません。共演はティボール・ヴァルガ弾き振りのデトモルド・ティボール・ヴァルガ管弦楽団か、あるいは、Hellmut Thierfelder指揮ハノーヴァー管弦楽団か、パガニーニのほかにラロの「スペイン交響曲」が併録されていて、どっちの曲をどっちが共演しているのかハッキリ書かれていないので、収録曲順と共演者の記載順で判断しました。当盤はティボール・ヴァルガ協会?(Fondation Tibor Varga)公認のシリーズらしく、海賊盤ではなさそうです。このライヴの録音データは不明ですが、おそらく1950年代(Loree大予想)。
 
ティボール・ヴァルガはヴィルトゥオーゾというイメージがあまりないので、まずもってパガニーニというレパートリーが意外。そして演奏が凄い!濃密な美音でエネルギッシュにバリバリ(サクサクと言うよりバリバリ)と弾き飛ばし、品格のあるバッハとかモーツァルトで彼に惹かれるようになった人(ぼく)は、初めて聴くと、これが本当にヴァルガ??と、耳を疑わずにはいられない。しかし、心を震わすヴィブラートは(暑苦しいけど)確かにヴァルガである。いいじゃないか!血気盛んな若きヴァルガ。お行儀の良いパガニーニなんか聴きたくない。
 
それにしても、再発売のカタログ番号まで追跡したディスコグラフィは凄すぎる。なんちゃってディスコグラフィを堂々公開している人はこの達人の爪の垢を煎じて飲まなければならない。

ヴァイオリン協奏曲第1番(パガニーニ/クライスラー編曲)

<曲名>
ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調~第1楽章(パガニーニ/クライスラー編曲
 
FJさん(仮名)の影響を受けて、パガニーニを聴きたくなりました。「悪魔が乗り移った男」なんていう異名をもつパガニーニですが、この曲におどろおどろしさは微塵も感じない。なんと屈託のない、明るい音楽であることよ。ぼくが大好きなクライスラー編曲版を5つの演奏で聴いてみます。
 
<演奏>
(1)フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン)、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団
(2)アルフレード・カンポーリ(ヴァイオリン)、ヴィクトル・オロフ指揮ナショナル交響楽団
(3)アルフレード・カンポーリ(ヴァイオリン)、ピエロ・ガンバ指揮ロンドン交響楽団
(4)ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)、ユベール・スダーン指揮ザルツブルグ・モーツァルテウム
(5)ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィル
クライスラーの編曲は、その第1楽章だけを独立させたものであり、冗長な部分のカットや細部の若干の変更を通じて、ソロ・パートを効果的にきわ立たせすっきりとしたまとまりを実現させる結果を生んでいる。(RCA国内盤≪クライスラー愛奏曲集≫R32C-1085のライナーノートより)
「細部の若干の変更」なんて、口から出まかせもたいがいにしてほしい。この名編曲はクライスラーがパガニーニの素材を使って曲を組み立て直したもので、「クライスラー作曲、パガニーニによる1楽章のヴァイオリン協奏曲」(Concerto in one movement after Paganini)とも表記されます。ハープを多用し、管楽器やチェロのオブリガードに彩どられた胸ときめくオーケストレションはまるでメルヘンです。
 
(4)→(5)→(2)→(3)→(1)の順に紹介します。
 
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ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)
ユベール・スダーン指揮ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団
【2001年7月、8月、10月録音、OEHMS】
http://ml.naxos.jp/album/OC303
 
先ずは、(4)から。このヴァイオリニストは、2004年のザルツブルグ音楽祭のオープニング・コンサートで小澤征爾指揮ウィーン・フィルとコルンゴルトの協奏曲を弾いたり、そして2011年にはウィーン・フィルがシェーンブルン宮殿の庭園でおこなう毎年恒例の野外コンサート(5)に登場し、飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍です。
 
彼はArte Nova(及びそこから分派したOEHMS)レーベルからたくさんのCDを出していて、ぼくも数枚持っていますが、音色がちょっと独特で、ぼくの好みとは違います。しかしそれは個人的な好みの問題で、クライスラー編曲版をリバイバルせんと大舞台で世界に紹介した心意気をもってぼくは彼のファンです。
 
スダーンはクライスラー編曲版の魅力を分かっている人。トゥッティを鮮やかに鳴らすだけでなく、魅惑のオブリガードの数々をしっかり聴かせてくれて、音楽自体の美しさに感じ入って思わず涙がこぼれそうになります。「5枚の中に決定盤はない」というのがぼくの考えですが、どれか1枚だけ選ぶなら当盤です。
 
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ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィル
【2011年6月2日収録(Live)、DG】
http://www.youtube.com/watch?v=TjXAc5NxsHI (最初から途中まで)
 
次に、(5)です。前述の通り、ウィーン・フィルの野外コンサートのライヴ映像です(カデンツァの手前で切って2つに分かれています)。ザルツブルグ・モーツァルテウムもいいけど、ウィーン・フィルはさすがです。ゲルギエフは腹の底に力のこもった音をオーケストラから引き出していますが、金管を荒れ狂わんばかりにブンブン鳴らし、迫力があり過ぎて、この夢見心地の名編曲にいまいち酔えません。
 
それにしても、クライスラーが第2主題に注いだ愛情はひとしおです。ハープ伴奏に乗ってヴァイオリンに寄り添うチェロ、つづいてフルート(2回目はクラリネット)のオブリガード(4分06秒~、11分27秒~)、また、パガニーニの原曲ではついに現れないトゥッティ(6分23秒~、13分45秒~)には感無量です。
 
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アルフレード・カンポーリ(ヴァイオリン)
ヴィクトル・オロフ指揮ナショナル交響楽団
【1946年6月4日録音、DECCA原盤/DUTTON】
http://www.youtube.com/watch?v=a6WPs2wxjH4 (一部分のみ)
 
つづいて、(3)です。動画は一部のみ。何を隠そう、カンポーリはぼくが大好きなヴァイオリニストです。彼のクライスラーは小曲も絶品で(例えば「愛の悲しみ」 http://www.youtube.com/watch?v=S7V9yzgEwR0)、もう、なめるような美音と恥ずかし気のないたっぷりとした歌いっぷりに心底ホレボレします。ヴァイオリンのソロの魅力は5枚のうち迷いなく最上位です。
 
オロフという人はカルショー以前のDECCAの名プロデューサーだそうです。なかなか見事な指揮ぶりですが、ぼくはやはりこの曲をモノラルで聴くのはストレスを感じます。それに、ぼくが持っているDUTTONの復刻盤は窒息しそうなほどノイズを除去しているので、動画と同じBEULAH盤がほしいです(入手困難)。
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アルフレード・カンポーリ(ヴァイオリン)
ピエロ・ガンバ指揮ロンドン交響楽団
【1957年録音、DECCA原盤/BELART】
http://www.muziekweb.nl/Link/BBX1191
 
というわけで、カンポーリのステレオ再録音(4)。これはCDではめったに見かけないもので、BELARTという、CDコレクターはあまり買わないレーベルから出ています。初期ステレオとはいえ、鮮明な録音で、音響的なストレスはありませんが(途中でちょっと音が割れますが)、残念ながらカンポーリは縫い目のない布のような旧盤に比べると、弦と弓が擦れるちょっとしたノイズが気になります。旧盤のカンポーリが新盤並みの録音だったら…と、思わずにはいられません。
 
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フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン)
ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団
【1936年12月13日録音、Victor原盤/NAXOS】
http://ml.naxos.jp/album/8.110922
 
最後に、(1)です。ぼくが初めてクライスラー編曲版を聴いたのは、クライスラー自身によるこの演奏でした。てゆーか、何を隠そう、パガニーニの原曲よりも先にこの演奏で「パガニーニの第1番」を覚えたことを告白します。でも、だからこの編曲版を偏愛しているわけではありません、間違いない。
 
うちにあるのは、RCA国内盤、Pearl、Biddulph、NAXOSの復刻盤です。価格と入手の容易さが理由ではなく、ロバの耳(ぼく)にはNAXOSで十分です。クライスラーも大好きなヴァイオリニストですが、この曲はやっぱりステレオで聴きたいというのが本音。

プロフィール

violin20090809

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