2016/10/17
ブランデンブルク協奏曲第5番BWV1050(バッハ)
<曲名>
ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050(バッハ)
通称≪ブランデンブルク協奏曲≫は、バッハの数ある協奏曲からバッハ自身が6曲を選んだ、言わば≪バッハ・セレクション≫です。6曲すべて異なる楽器編成からして独創的、特に第5番はフルート、ヴァイオリン、チェンバロのための三重協奏曲ですが、第1楽章の主役は明らかにチェンバロで、はじめのうちは通奏低音的な役割に甘んじているけど、徐々に派手な動きを見せるようになり、ついには長大なカデンツァを獲得するという、「鍵盤協奏曲の誕生」を描いたようなストーリーが感動的です。実際、これは音楽史上でも最初期の鍵盤楽器をソロ楽器とする協奏曲だったはずです。
そんなわけで、特にこの楽章でのフルートとヴァイオリンはやや添え物的ですが、ゆうちゃんがソロを担当することに。ゆうちゃんは2つのオーケストラを掛け持ちしていて、この曲は地域のジュニアオケで演奏するのですが、そろそろ掛け持ちもきつくなってきて、これがジュニアオケでの最後のステージとなる予定。本番は2週間後。
<演奏>
クラフト・トルヴァルト・デイロー(フルート)
ラインホルト・バルヒェット(ヴァイオリン)
ヘルマン・ヴェルダーマン(チェンバロ)
フリードリヒ・ティーレガント指揮南西ドイツ室内管弦楽団
【1960年録音、Ariola-Eurodisc原盤/DENON】
ぼくの刷り込みは小学6年くらいのとき(80年代半ば)、近所の図書館から借りたカール・リヒターで、グラモフォンの「ベスト100」に含まれていた、黄色の背中のMT(ミュージックテープ:もはや死語)を今もはっきり覚えています。原盤はアルヒーフでは?なんて、当時考えるはずもない。
それから数年後(80年代末)のグラモフォンの「ベスト100」で当曲に選ばれていた演奏はトレヴァー・ピノックでした。ピノックも名演かもしれませんが、「ベスト100」の購入層が聴く初めてのバッハがリヒターかピノックか、それは非常に大きな違いのはずで、決して良し悪しの問題ではなく、ほんの数年のタイミングでガラリと時代のセンスが変わった(そう感じた)ことが当時のぼくにも驚きでした。
今やプロの世界は古楽の専門家でない人まで古楽の奏法を取り入れるのがトレンドで、リヒターやミュンヒンガーのような60~70年代的なスタイルで演奏すると不勉強の謗りを免れず(たぶん)、ぼくは同情します。しかし実情として、アマチュアの合奏団がバッハを演奏するとき、よほど意識高い系のマニア集団でもなければ当然に戦後の伝統的なモダン楽器の奏法が標準のはずで、ゆうちゃんのオケもそうです。
そんなわけで、今回ゆうちゃんに聴かせる参考演奏の筆頭にぼくが選んだのはティーレガント。なぜこれかと言うと、大前提としてゆうちゃんのオケの演奏スタイルに合致していること、さらに演奏の良さと録音の良さが両立しています。つまり、ヴァイオリンとフルートのソロがくっきり前面に出て、うるさいチェンバロ(←失礼)は引っ込み、残響もあまり感じさせず、両ソロがとても鮮明でストレスなく聴き取れます。巷の名盤案内では考慮されない、こういう実用的な基準で音源情報を共有することも必要じゃないかと思う、今日この頃。