コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲(グリエール)

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<曲名>
コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲(グリエール)

第1楽章 アンダンテ(ヘ短調)
第2楽章 アレグロ(ヘ長調)

協奏曲と言えば、ソロ楽器がオーケストラをバックに名技を披露するものですが、これは声を主役とする協奏曲。「コロラトゥーラ」と言うと、やたら高音を誇示する曲芸じみたオペラを想像します(偏見)。確かにこの協奏曲にも高音はある。跳躍もある。でも、技巧のための技巧とは無縁。時間が流れるのを忘れるほど自然に音楽が流れていくので、実は難易度が高いのかもしれないけど、コロラトゥーラであることも忘れてしまいます。

なんという美しさ。深さ。歌詞はなく、すべて母音(Ah)による歌唱…つまりヴォカリーズ。「ヴォカリーズ」と言えば同世代のラフマニノフが有名ですが、知名度では比較にならないグリエールの何がラフマニノフの「ヴォカリーズ」に及ばないだろう。ソプラノに絡むクラリネットやオーボエのオブリガードの魅力は筆舌に尽くし難く、ハープの美しさも全曲にわたって心に染みます。

1943年作曲。その音楽は内省的で、まるでロマン派です。

<演奏>
(1)エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)
クルト・アイヒホルン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団【1983年録音、ORFEO】
http://ml.naxos.jp/album/C072831A
https://www.youtube.com/watch?v=0-RxDoXCCBM (13分47秒)

この曲をぼくに教えてくれた人(彼女ではない)はソプラノを勉強していて、その人から借りて聴いたのが当盤でした(あまりの美しさに後日、自分でも購入)。グルベローヴァ、当時37歳。一つ一つのフレーズの表現が練りに練られた知的かつ貫禄のソロです。録音の焦点がグルベローヴァに偏っていて、オーケストラの細部が聴き取りにくいのが残念。ジャケットのインパクトも強烈。

(2)ナタリー・デッセイ(ソプラノ)
ミヒャエル・シェーンヴァント指揮ベルリン交響楽団【1997年録音、EMI】
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005GJKN
(試聴できます)

美熟女(グルベローヴァ)の濃厚なアプローチのあとにデッセイを聴くと、良く言えばピュア。わるく言うと、やや単調。でも天下の美声であることは疑いません。デッセイ、当時32歳。オーケストラの音もしっかり録音されていて、木管楽器の美しいソロを堪能できるし、低弦や内声の動きがよく分かり、これがまた美しいのです。ソロだけならグルベローヴァの聴き応えに惹かれますが、協奏曲としての総合点は(ジャケットも)当盤に軍配を上げます。

(参考)
アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)、ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団
【2003年5月30日?、サンクトペテルブルク建都300年記念ガラ?】
第1楽章 http://www.youtube.com/watch?v=pY5opm7xs3E (6分51秒)

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映画「逢びき」(ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番)

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優しい夫と2人の子どもに恵まれた平凡な主婦ローラが、小さなきっかけで妻子ある医師アレックと出会い、やがて恋に落ちる。お互いに家庭をもつ立場ゆえ、罪悪感に苦しみつつ、毎週木曜日に逢びきを重ねる。しかし、二人はまもなく別離の道を選ぶ。

<タイトル>
逢びき(原題:Brief Encounter)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4101406
予告編 http://www.youtube.com/watch?v=a0CosTboBz8 (2分33秒)
全編 http://www.youtube.com/watch?v=LguRis_h1qc (86分22秒)

【公開】1945年(イギリス)
【原作】ノエル・カワード
【監督】デヴィッド・リーン
【キャスト】シリア・ジョンソン(ローラ役)、トレヴァー・ハワード(アレック・ハーベイ役)ほか

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番についての解説は、映画「逢びき」に使用されたことに言及するのが定番です。実際、この映画は最初から最後までラフマニノフのピアノ協奏曲第2番なのです。しかも、第1楽章の第2主題や第3楽章の第2主題といった必殺の名旋律だけでなく、全曲のあらゆる部分から映画の各場面に合った音楽が選ばれ、(ごく一部のシーンは別として)他の曲は一切使わないという徹底ぶりです。

映画は、ローラの回想に基づいて進行します。

ローラは毎週木曜日に汽車に乗ってミルフォードという街に来て、買い物をしたり、図書館で本を借りては返し、映画を見たりして過ごし、夕方の汽車で帰宅するのが習慣になっています。

ある木曜日、ミルフォード駅で汽車(蒸気機関車!)のススがローラの目に入って取れないところを通りがかりの医師アレックが助けます。アレックの仕事は開業医。毎週木曜日に友人医師の代診のためミルフォードの病院に来ています。

翌週の木曜日も二人は偶然に顔を合わせますが、短い挨拶を交わしただけで立ち去ります。しかし、次の木曜日にもまた駅の喫茶店で偶然出会い、相席で食事をしたことがきっかけとなって、二人の関係はだんだん変わっていきます。自分の専門である予防医学のことを少年のように目を輝かせて熱っぽく語るアレック。そのアレックを見つめるローラ。二人はお互いに惹かれ合い、その日の別れ際、アレックは「次の木曜日も同じ時間にここで会ってほしい」とローラを誘います。我に返り、いったんは拒絶するものの、結局受け入れるローラ。

二人は、映画を見たり、植物園に行ったり、湖でボートに乗ったりして楽しくデートしますが、お互いの気持ちを確認することでローラは激しく動揺します。

そして二人は別れることに。アレックは兄から打診されていた南アフリカへの赴任を受け入れ、家族とともに移住することを決意します。

最後にもう一度だけ会うものの、会話はほとんどなく…。そして、アレックの汽車が来るのを駅の喫茶店で待つ、残り数分間。ところがここで思わぬことが!二人の最後の時間は台無しとなるのです。運命は残酷。

二人は結局、男女の関係になることはありませんでした。途中、アレックが友人から借りた部屋にローラを誘う場面があります。その友人はローラの存在を知らず、遅くまで帰って来ない予定。部屋に行けばローラはアレックと夜まで二人きり。さんざん迷った末にアレックが待つ部屋を訪れるローラ。でも、許されぬ恋をして良心の呵責を感じ、葛藤するローラに、本当に一線を越える覚悟はあったのか?もし、友人が予期せぬ早帰りをしなかったら、どうなっていたのか?…悩み苦しみながらも彼に抱かれたかもしれないし、あるいは踏みとどまったかもしれない。それは分かりません。

この映画を見て、深く長い余韻が残るのは、二人の関係にクライマックスがないから…。もどかしい。その上、音楽が切ない。ラフマニノフの音楽がなかったら、この映画はもはや「逢びき」ではありません。

ぼくはこの映画を見ると、数日は立ち直れない。

映画「サウンド・オブ・ミュージック」オリジナル・サウンドトラック

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映画「サウンド・オブ・ミュージック」を初めて見たのは、中学校の音楽の授業でした。高校生のときにCDを買って、英語の歌詞も必死になって覚えたものです。

長年聴いてきたオリジナル・サウンドトラックの最大の不満は「エーデルワイス」でした。頑なに音楽を遠ざけてきたトラップ大佐の心がついに氷解し、マリアと子どもたちに促されてギターの弾き語りで歌う名場面がカットされ、音楽祭のステージで歌うバージョンしか収録されていないのです!これではいかにも画竜点睛を欠きます。

ところが、近年再発売されたCDは旧盤に含まれていなかったこの「エーデルワイス」のほかにも「間奏曲」などを新たに収録し、トラック数が大幅に増えていて、まさに決定盤と言える充実した内容です。最初からこの内容で発売してほしかったな~。

<アルバムタイトル>
映画「サウンド・オブ・ミュージック」オリジナル・サウンドトラック
http://www.amazon.co.jp/dp/B0048JEED8
(試聴できます)

ぼくが特に好きなのは次の5曲。夢中になって聴いた高校時代、一緒に聴いてくれた彼女のことを思い出して、なんだか甘酸っぱい気持ちになります。

1)前奏曲(オーケストラ)
劇中の主要なメロディから、メインテーマにつづいて「ドレミの歌」「私のお気に入り」「何かいいこと」「すべての山に登れ」をポプリ風に接続した前奏曲は、このミュージカルの音楽の魅力を3分間に凝縮しています。アーヴィン・コスタル指揮の演奏はいかにもスタジオオーケストラっぽく、勢いがあって、でもムードもあって、センス満点。

2)もうすぐ17歳
トラップ家の長女リーズルがボーイフレンドのロルフと密会(?)する場面。ぼくもロルフみたいな甘~い美声で女の子を口説いてみたい。リーズルの歌はそれほど巧いと思いませんが、“Fellows I meet may tell me I'm sweet And willingly I believe”の歌い方はとってもかわいいし、ちょっと素人っぽいところがかえってリアルで男心をくすぐります。

3)私のお気に入り
夜、雷に怯えてマリアの部屋に集まる子どもたちに「つらいときは楽しいことを考えるのよ」と、お気に入りのものを次々と挙げて歌う場面。ぼくの英語力では何を言っているのかほとんど聴き取れません。歌詞を見ても知らない単語ばかりでお手上げ!でも、メロディもハーモニーも絶美。

4)エーデルワイス
前述の名場面。大佐のかすれる声とか、後半、長女リーズルとデュエットになるところは実に感動的。

5)何かいいこと
大佐はエルザ男爵未亡人と再婚するものと思っていたマリアが、まさかのプロポーズを受けた後のラブシーン。マリアの最初の一言“perhaps”の声のかすれ具合がセクシー!

※歌詞サイト
http://www.allmusicals.com/s/soundofmusicthe.htm

歌劇「騎士パズマン」~チャルダッシュ(ヨハン・シュトラウス2世)

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あけましておめでとうございます。クラシックブログは新年の書き初めにウィーン・フィルのニューイヤーを取り上げることが暗黙の掟になっています(ウソ)。

<曲名>
歌劇「騎士パズマン」~チャルダッシュ(ヨハン・シュトラウス2世)

チャルダッシュはジプシー音楽では定番の形式で、前半は緩やかで哀愁漂う「ラッサン」、後半は一転して快速で血が沸き立つような「フリスカ」という二部構成。

19世紀にはリストやブラームスをはじめ多くの作曲家がジプシー音楽の影響を受けました。ヨハン・シュトラウス2世もその一人です。有名な喜歌劇「こうもり」第2幕では、遊び人の夫を懲らしめるために妻ロザリンデが仮面をつけてハンガリーの伯爵夫人に変装して夫のいる宴会に潜り込み、自分がハンガリー人であることを証明するためにチャルダッシュを歌う場面があります。たぶん、ヨハン・シュトラウス2世のチャルダッシュと言えばコレです。

「騎士パズマン」のチャルダッシュは「こうもり」の知名度には負けますが、泣かせるラッサンといい、カッコよすぎるフリスカの手に汗握る興奮といい、ぼくは「こうもり」に勝るとも劣らない名曲と信じて疑いません。ストーリーは知りませんが、とにかくカッコいい!

<演奏>
カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団【1989年1月1日録音、SONY】
http://tower.jp/item/498673/美しく青きドナウ~ウィンナ・ワルツ集-ニューイヤー・コンサート'89
(試聴できます)

実はぼく、以前はシュトラウスなんてどこがいいのかサッパリ分かりませんでしたが、10年くらい前に市民オケの友人邸でこの演奏のDVD(当時はLDだったかも)を見せられ、一瞬にして改心(?)したのです。今は亡きカルロス・クライバーの芸風も、まさにチャルダッシュにピッタリじゃないですか!

こんな時間に聴いたら、興奮して眠れなくなること間違いなし。

プロフィール

violin20090809

Author:violin20090809
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