2010/01/24
コロラトゥーラ・ソプラノ協奏曲(グリエール)
<曲名>
コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲(グリエール)
第1楽章 アンダンテ(ヘ短調)
第2楽章 アレグロ(ヘ長調)
協奏曲と言えば、ソロ楽器がオーケストラをバックに名技を披露するものですが、これは声を主役とする協奏曲。「コロラトゥーラ」と言うと、やたら高音を誇示する曲芸じみたオペラを想像します(偏見)。確かにこの協奏曲にも高音はある。跳躍もある。でも、技巧のための技巧とは無縁。時間が流れるのを忘れるほど自然に音楽が流れていくので、実は難易度が高いのかもしれないけど、コロラトゥーラであることも忘れてしまいます。
なんという美しさ。深さ。歌詞はなく、すべて母音(Ah)による歌唱…つまりヴォカリーズ。「ヴォカリーズ」と言えば同世代のラフマニノフが有名ですが、知名度では比較にならないグリエールの何がラフマニノフの「ヴォカリーズ」に及ばないだろう。ソプラノに絡むクラリネットやオーボエのオブリガードの魅力は筆舌に尽くし難く、ハープの美しさも全曲にわたって心に染みます。
1943年作曲。その音楽は内省的で、まるでロマン派です。
<演奏>
(1)エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)
クルト・アイヒホルン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団【1983年録音、ORFEO】
http://ml.naxos.jp/album/C072831A
https://www.youtube.com/watch?v=0-RxDoXCCBM (13分47秒)
この曲をぼくに教えてくれた人(彼女ではない)はソプラノを勉強していて、その人から借りて聴いたのが当盤でした(あまりの美しさに後日、自分でも購入)。グルベローヴァ、当時37歳。一つ一つのフレーズの表現が練りに練られた知的かつ貫禄のソロです。録音の焦点がグルベローヴァに偏っていて、オーケストラの細部が聴き取りにくいのが残念。ジャケットのインパクトも強烈。
(2)ナタリー・デッセイ(ソプラノ)
ミヒャエル・シェーンヴァント指揮ベルリン交響楽団【1997年録音、EMI】
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005GJKN
(試聴できます)
美熟女(グルベローヴァ)の濃厚なアプローチのあとにデッセイを聴くと、良く言えばピュア。わるく言うと、やや単調。でも天下の美声であることは疑いません。デッセイ、当時32歳。オーケストラの音もしっかり録音されていて、木管楽器の美しいソロを堪能できるし、低弦や内声の動きがよく分かり、これがまた美しいのです。ソロだけならグルベローヴァの聴き応えに惹かれますが、協奏曲としての総合点は(ジャケットも)当盤に軍配を上げます。
(参考)
アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)、ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団
【2003年5月30日?、サンクトペテルブルク建都300年記念ガラ?】
第1楽章 http://www.youtube.com/watch?v=pY5opm7xs3E (6分51秒)