広島交響楽団の演奏会を聴く。

中四国唯一のプロオーケストラ、広島交響楽団(広響)。
 
広島交響楽団「ロマンティシズムの源流を訪ねて」第5回
指揮:秋山和慶
【日時】2010年5月28日(金)18時45分開演
【会場】アステールプラザ 大ホール
【曲目】
○シューマン/マンフレッド序曲
○ロッシーニ/弦楽のためのソナタ第6番二長調
○ウェーバー/クラリネット小協奏曲変ホ長調 (クラリネット:高尾哲也)
○メンデルスゾーン/交響曲第3番イ短調「スコットランド」
 
広響を聴いたのは、2006年の第9(招待券もらった)以来、2回目。昨年9月に定期演奏会の公開リハーサルを聴きに行ったのを含めても3回目です。だいたい、演奏会にはめったに行きません。ゆうちゃんが出演するものを除くと、年1回程度。気分屋のぼくは演奏会当日にその曲を聴く気分じゃないかもしれないし、平日は仕事の都合もあるし(以上、言い訳)。でも最近、ブロ友さんが地元楽団の定期会員になって演奏会に通っている話を聞いたりしているので、なんだか自分も聴きたくなってきたのでした。
 
今回は定期演奏会ではなく、ディスカバリー・シリーズ「ロマンティシズムの源流を訪ねて」の第5回です。指揮は広響音楽監督・常任指揮者の秋山和慶さん。ゆうちゃんは秋山さんの指揮で弾いたことがあるので、わが家では「秋山先生」です。「秋山さん」とは呼べません。ましてや呼び捨ては論外。ただし、「ケンタッキーのおじさん」の別称は認められています(某広響団員の方がそう呼んでいた)。
 
ディスカバリー・シリーズの会場はアステールプラザの大ホール(約1200席)。1階席と2階席があり、2階席は6列のみ。ぼくは2階席の前から4列目(つまり最後列から3列目)のほぼ中央で聴きました。このホールは何度か来ていますが、2階席は初めて。なんか、高くないか??ステージが小さく見える。ちょっとこわい(実は高所恐怖症)。
 
プログラムを開くと、中に挟まれた演奏会の宣伝チラシと一緒に「お願い」と書かれた紙が1枚。内容は「演奏中は静かにしましょう」「早すぎる拍手やブラボーはやめましょう」等、演奏会を聴く上での基本的なマナー5箇条。主催者側からのブラボー禁止令は初体験。でも、世界中の演奏会で配布してほしいなんて思ってみたりして。
 
さて、本番。
 
シューマン/マンフレッド序曲
知らないなぁ。CD持ってるけど。劇付随音楽の序曲だそうです。ストーリーは省略。2管編成、第1ヴァイオリンが10人+αの中規模オーケストラですが、音が飛んで来ないなぁ…。なんだかロビーのモニターテレビから聴こえてくるような他人事の音。響きがごちゃついているのも気になる。広響、だいじょうぶか?
 
ロッシーニ/弦楽のためのソナタ第6番二長調
なんと、12歳のときの作品。全6曲のうち第1番はFM番組のテーマ曲にも使われていたと思います。広響はディスカバリー・シリーズですでに第1~5番を取り上げているので、このソナタ集は今回が完結編。第6番は3つの楽章のうち、第1・第2楽章はディヴェルティメント風のしゃれた音楽で、明るく屈託がない。第3楽章は“Tempesta(嵐)”ということで、長調だけど疾風怒濤。弾むリズム、流れるようなメロディ。さすが将来のオペラ作曲家と思うのは単なる先入観のせいばかりではなさそう。ロッシーニ・クレッシェンドっぽい(でも控えめな)煽りが出てくるのもおもしろい。

編成はとてもユニーク。第1・第2ヴァイオリン、チェロとコントラバスの弦楽4部(ヴィオラなし)。広響はここでセッティングを変更し、第1・第2ヴァイオリン各8名、チェロ5名、コントラバス3名にスリム化。また、通常は第1・第2ヴァイオリンは隣同士ですが、この曲だけ対向配置にして、チェロが舞台中央、コントラバスはチェロの奥。これはナイスアイディア。両ヴァイオリンが交代でメロディを受け持つ場面がけっこうあるので、視覚的にもその受け渡しがよく分かりました。

秋山先生の指揮はあまり低弦のリズムを強調せず、両ヴァイオリン主体のアプローチでしたが、途中に出てくるチェロ首席のマーティンさんのソロはなかなか素敵でした。演奏後、彼を立たせて拍手を受けさせたのも当然。第3楽章(Tempesta)は、もっと振幅の大きな表現でもよかったのでは。あんまり嵐らしくない。1曲目のシューマンと同様、音が飛んでこないのでそう感じたのかも。
 
ウェーバー/クラリネット小協奏曲変ホ長調
クラリネット吹きには人気のある曲らしく、わが家ではおなじみの1曲(妻が以前よく吹いていた)。3つの部分に分かれていますが、単一楽章で10分弱の小品です(プログラムでは3楽章構成と解説されていたけど、そうなのかな?)。ハ短調の悲劇的な短い序奏のあと、すぐに弱音でクラリネットのソロが入ってきます。ブラボー!(←あ、禁句)
 
ソリストは広響団員の高尾哲也さん。団員名簿を見る限り、広響の管楽器に首席のポジションはないみたい。でも、実質的に首席の方と思います。チラシの写真のまま、この人は笑うことあるんだろうかといった雰囲気。その実力には、まったく驚いてしまった。高音域から低音域まで、またフォルテからピアノまで、芯があり肉付きもある音色。安定した技術。しかも、音のよく通ること!この日初めて、楽器の音がダイレクトに届いてきた。音が飛んでこないのは座席のせいじゃなかったんだ。

演奏後は舞台袖から中学生らしき制服姿の女の子が登場し、大きな黄色い花束を贈呈。娘さんかな。それとも生徒かな。10分足らずの小品で再三再四のカーテンコール。最後は高尾さんも油断していたのか、「まだやるの!?」と言わんばかりに小走りで慌てて(でも無表情のまま)再登場、聴衆の笑いを誘っていました。

広響も大健闘。1曲目のシューマンよりやや小さめの編成ながら、音がしっかり前に飛んでくる。なんと見通しの良い響きであることよ。そうか、シューマンの厚塗りのオーケストレーションが音を混濁させていたんだ。もちろんあれをスッキリ響かせる技量をもった指揮者・楽団もあるかもしれないけど、根本的にスコアが違うような気がする。ディスカバリー。
 
休憩を挟んで、メインプログラム。
 
メンデルスゾーン/交響曲第3番イ短調「スコットランド」
ふだん、ベートーヴェン以外の交響曲はめったに聴かないけど、「スコットランド」は例外。40分という時間があっという間に感じる、お気に入りの1曲。

広響は実力全開。本当にシューマンと同じオーケストラか?冒頭のメロディは明らかにオーボエがリード。オーボエ出身のぼくとしてはこれが心地良い。広響の木管セクションは総じてレベルが高い。ウェーバーでソリストを務めた高尾さんはさすがに降り番でしたが、代わりに(?)一番クラを吹いた方も申し分ない実力。張りきるだろうなぁ。フルートも絶品。
 
秋山先生の指揮は、全体としてはテンポもバランスもまったくオーソドックス。「スコットランド」はこういう曲、というイメージ通りに進行する。オーソドックスというのは無策という意味でなく、各所の強弱やアクセント、カンタービレ等々に的確な指示があってこそ実現できるものだということが秋山先生の指揮ぶりから伝わってくる。特に暖色系の第3楽章では地元楽団であることを忘れて聴き入っている自分に気づく。終演後はさっきと別の女子中学生(たぶん)が登場し、秋山先生に大きな花束。いったい誰なんだ。
 
率直に言うと、大感激とまではいかないけど、日常生活の延長として十分満足。行きつけの料理屋で店主おすすめの一品を味わうような、ささやかな楽しみ。三ツ星でなければ料理屋でないということもない。広響、また聴いてみたいです。次は定期演奏会に行ってみようかな。
 
終演後、ロビーのCD販売コーナーの辺りをウロウロしていたら、地元テレビ局が来ていて、なんと!インタビューされちゃいました!でも、いきなりマイクを向けられても言葉が見つからない
 「今日の演奏はいかがでしたか?」「これからの広響には何を期待しますか?」等々、何てことはない質問を3~4つされたけど、ニコニコ・カメラ目線の余裕とは裏腹に脳内は大混乱。口から出まかせ、ウソ八百。本番の録画はしていなかったと思うけど、ニュース番組向けの取材なのかな。「あのインタビューを受けていた人は誰ですか?」とか、問合せやファンレターが殺到したらどうしよう~(←妄想)
 
カットされてたりして
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4分33秒(ジョン・ケージ)

最近なんだか書く気が起きない。そんなときは、沈黙が似合う。
 
<曲名>
4分33秒(ジョン・ケージ)
 
<演奏>
ローレンス・フォスター指揮BBC交響楽団
https://www.youtube.com/watch?v=zY7UK-6aaNA (9分22秒)
 
第1楽章 動画の1分07秒から2分43秒まで
第2楽章 動画の3分07秒から5分25秒まで
第3楽章 動画の5分38秒から6分25秒まで
 
ずっとピアノ曲だと思っていたけど、何の楽器で演奏してもいいらしい。これはバスクラやコントラファゴットを含むかなり大きな編成のオーケストラ。指揮台のスコアをめくり、指揮棒を構えるマエストロ。楽団員は誰も楽器を構えない。半分寝ている人も(?)。マエストロも第1楽章と第2楽章の間には汗をぬぐい、サービス精神たっぷり。なかなかの役者ぶりです。途中(3分37秒~)、スコアが映りますので注目!演奏が終わると拍手喝采。リハーサルを見たかった
 
合計しても4分33秒にならないのは、目視計測のハンディがある上、各楽章の開始と終了がどこなのかハッキリ分からないのが致命的
 
初演者デイヴィッド・テュードアのピアノ演奏(下の動画)では、演奏者によるかんたんな解説が入ります(字幕つき)。
 
沈黙に耐えられる方は、どうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=HypmW4Yd7SY (5分49秒)

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