数ヶ月前のある休日、家族三人で見ていたテレビ番組で「人間はウソをつくときは必ず表情に表れる。」という話をやっていました。例えば、ウソを言った後に唇を噛んだり、眉が少し動いたり、あるいは必要以上に微笑んでみたり…必ず何か不自然な動きをするそうです。
そこで、ぼくとゆうちゃん(小学4年)の会話。
ぼく : お父さんの顔、見て?
ゆうちゃん : うん。
ぼく : 今からお父さんが言うこと、本当かウソか、当ててみて。
ゆうちゃん : いいよ。
ぼく : 「お父さんは、お母さん以外に彼女がいます。」(本当かウソか、当ててみて?)
ゆうちゃん : やっぱりやめとく…。
ぼく : え~。なんで?
ゆうちゃん : 本当だったらコワイから…。
ぼく : ……。
妻 : (聞いてないフリ。)
<タイトル>
「七年目の浮気」(原題:The Seven Year Itch)
【公開】1955年(アメリカ)
【監督】ビリー・ワイルダー
【キャスト】トム・イーウェル(リチャード役)、マリリン・モンロー(The Girl役※)、ほか
(※モンローが演じる美女には名前が付いていない)
出版社勤務の中年男リチャードは妻と息子の三人暮らし。リチャードは結婚して7年目ですが、愛妻家なのか恐妻家なのか、一度も浮気をしたことがありません。でも、その気になれば自分だって…と思っていたりします。
夏休みに妻と息子がしばらく留守をすることになって、二人を飛行場まで見送りに行ったリチャード。彼がアパートに戻ると、住民とおぼしきセクシー美女が!どうやら彼女は夏休みの間だけ階上の部屋を間借りしたようです。つかの間の浮気を期待するリチャードは彼女を部屋飲みにお誘いすることに成功。彼女が着替えてからリチャードの部屋にやって来るのを待つ間、ウキウキして雰囲気づくりに励み、これから始まろうとしている甘くて熱い時間を妄想する…。
○ラフマニノフで美女を酔わす妄想のシーン
リチャード : (レコードを選びながら)ドビュッシー?ラヴェル?ストラヴィンスキー?ストラヴィンスキーじゃダメだ。ああ、これこれ!ラフマニノフ!女ってのは、このムードにシビれちゃうからな。(レコードをかける)これこれ、このムード。ピアノ協奏曲第2番!これなら絶対…!
(ここから妄想。美女登場。)
リチャード : (ピアノを弾きながら、)来たね。待ってたよ。
美女 : ラフマニノフ…!
リチャード : ピアノ協奏曲第2番!
美女 : イジワルね…。
リチャード : イジワル?なぜ?
美女 : これを聴くと我慢ができなくなるの…。隣に座っていい?
リチャード : どうぞ。
美女 : (音楽に悶えながら、)シビレちゃう…!感じちゃう…!体が熱くなって燃えそう!自分がどこにいるのか、誰なのか。みんな忘れちゃう…!でもやめないで…!やめちゃダメ…!やめちゃイヤ…!
(ここでリチャードが弾くのをやめる。)
美女 : なんでやめたの?
リチャード : わけを教えてあげよう。
美女 : なに?
リチャード : つまり、君を強く抱きしめてキスするためだ!さっと素早く。熱いキスをね。
リチャードと美女 : (熱い抱擁とキス。盛り上がるラフマニノフの音楽。)
以上、妄想おわり。(部屋のチャイムが鳴る)
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を印象的に使用した映画と言えば「逢びき」が有名です。「逢びき」は既婚男女の結ばれることのないダブル不倫を描いたせつない物語でしたが、「七年目の浮気」は完全にコメディーです。リチャードは編集者という仕事柄か、人並み外れた想像力の持ち主で次々と繰り広げられる妄想がバカバカしくて、くだらなくて、おもしろすぎる!
ちなみに、現実のリチャードが美女にせがまれて弾くのはラフマニノフ…とは大違い。なんと、「チョップスティックス」です(→
https://www.youtube.com/watch?v=IWwSEM5lI-U)。この現実と妄想のギャップがまた何とも。リチャードはピアノ(チョップスティックス)を弾きながらだんだん現実とさっきの妄想がごちゃ混ぜになって美女に迫りますが…そんな実力行使に出るのはこの場面だけ。彼女も、別に気にしていません。
彼女はその後もリチャードの部屋に入り浸りですが、実は自分の部屋にはクーラーがないので、涼しい環境を求めて遊びに来ているだけだったりします。(最初はそうでしたが、次第に、ウブでシャイでお茶目なリチャードに魅かれていくような様子も…?)
でも、リチャード、本当は浮気なんかできる男じゃないんです。
ゆうちゃん、お父さんだってそうだよ。たぶん
