ラ・フォリア(コレッリ)

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今、ゆうちゃんが「ラ・フォリア」を練習しています。2年前にスズキメソードの教本で弾いた「ラ・フォリア」はダーヴィト(1810~1873)による編曲版がベースとなっていました。今、使っている楽譜は「新しいバイオリン教本」で、これはレオナール(1819~1890)による編曲版がベースとなっています。「ラ・フォリア」は篠崎の教本にも載っている定番曲ですが、版違いで2回も弾くことになったのは…なんでだろう~♪
 
<曲名>
ラ・フォリア(コレッリ)
 
前回につづいて、エミリー・オータム。「ヴィターリのシャコンヌ」も含むアルバム≪LACED/UNLACED≫(2007年発売)は2枚組で、1枚目≪LACED≫はバロック・ヴァイオリン、2枚目≪UNLACED≫はエレキ・ヴァイオリンという構成。1枚目の収録曲目は次の通りです。
≪LACED≫
1)ラ・フォリア ~ヴァイオリン・ソナタ・ニ短調 作品5-12(コレッリ)
2)「ラ・スパーニャ」の定旋律によるレセルカーダ第1番 ~≪変奏論≫より(オルティス)
3)ラルゴ ~ヴァイオリン・ソナタ第4番ハ短調BWV1017より(バッハ)
4)アレグロ ~ヴァイオリン・ソナタ第2番ホ長調BWV1015より(バッハ)
5)アダージョ ~ヴァイオリン・ソナタ・イ短調 作品5-7より(ルクレール)
6)タンブーラン ~ヴァイオリン・ソナタ・ハ長調 作品5-10より(ルクレール)
7)Willow(エミリー・オータム)
8)Revelry(エミリー・オータム)
9)On a Day...(エミリー・オータム)
10)Prologue(エミリー・オータム)
11)シャコンヌ ~ヴァイオリン・ソナタ第12番ト長調より(ロナティ)
12)シャコンヌ(ヴィターリ)
13)ラ・フォリア ~ヴァイオリン・ソナタ・ニ短調 作品5-12(コレッリ)
14)Epilogue(エミリー・オータム)
 
1)~9) エミリーのデビュー・アルバム≪On a Day...≫(1997年)を全曲再収録
10)~14) ボーナス・トラックとして、当アルバム≪LACED/UNLACED≫が初出となるライヴ録音)
≪LACED≫に収録されている2つのフォリアは別録音で、以下、アルバム1曲目の演奏を(A)、13曲目を(B)とします。
 
<演奏>
(A)エミリー・オータム(ヴァイオリン)
Edward Murray(チェンバロ)、Roger Lebow(チェロ)、Michael Egan(リュート)
http://www.youtube.com/watch?v=smbyxlBlds0 (10分19秒)
 
(B)エミリー・オータム(ヴァイオリン)、共演者不明(チェンバロ&チェロ&リュート)
http://www.youtube.com/watch?v=PPabOLRi3DM (9分56秒)
 
(A)はエミリー17歳(1997年)の録音。彼女がメタルのシンガーとしてレコーディング・デビューしたのは2001年なので、その4年前。エミリーはその頃からゴスロリだったのか。使用楽器はバロック・ヴァイオリン(と、書かれている)。奏法は「擬似ピリオド風のエミリー節」といった感じで、確信犯的に現代音楽のような音を取り入れるところがエミリーらしい。
 
(B)が本命。このライヴはボーナス・トラックの扱いで、録音年・共演者とも明記されていないことが残念。ぼくはこの2つの演奏が同時期とはとても思えない。(B)は目が据わっている様子が音に表れ、見えない敵と闘うかのように空気を切り裂き、緩急のギアチェンジもほとんど半狂乱。命を引き換えにするつもりじゃないかという気さえする。あまりのことに聴衆が途中で思わず拍手しているのは無理もない。これまで何人かのピリオド奏者が過激と言われてきたかもしれないけど、エミリーのように「地」でそれをやる人がいただろうか。このフォリアに別のタイトルを付けるなら「テンペスト(嵐)」か。
 
12歳のゆうちゃんも思わず「…凄いね。」と呟いた、「R-15指定」のまさにフォリア(狂気)!
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シャコンヌ(ヴィターリ)/エミリー・オータム

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<曲名>
シャコンヌ(ヴィターリ)
 
<演奏>
エミリー・オータム(ヴァイオリン)、共演者不明(チェンバロ&チェロ&リュート)
【2007年発売(録音年不明)、Trisol Germany】
http://www.asylumemporium.com/collections/music/products/laced-unlaced
http://www.youtube.com/watch?v=XDt_Z_pqvAw (10分24秒)
 
果たして、演奏家の人生とその演奏内容に相関関係はあるのか。この凄絶なヴィターリを弾く無名の若い女性ヴァイオリニストがどんな人物なのか、ネット上に書かれている彼女のショッキングな過去は「さもありなん」と頷くに足るものの、どこまで真実か判らない。
 
確かなことは、エミリー・オータム(1979年生まれ)はアメリカのヘヴィメタルのシンガーソングライターであり、ゴシック・ロリータ(略してゴスロリ)ファッションに身を包んで歌い、ヴァイオリンも弾く(こんな感じ→ http://www.youtube.com/watch?v=V8r9lTR3NAA )。ちなみに、ヘヴィメタルにも様々なジャンルがあって、彼女のスタイルは「インダストリアル系ゴシック」というそうです。興味ある方は自分で調べてください(逃)
 
そんな彼女の古楽が凄い。ヘヴィメタルではなく古楽。ピリオド・スタイルを装っていますが、実際はそれを目指してもいない(たぶん)、彼女流儀の古楽。ヴィターリの楽譜はオリジナル版(前回記事参照)をベースとしていて、つまり桐山建志さんと同じですが、演奏そのものは対極。彼女の大胆な即興的装飾や音符の変更に驚くなら、それは些末なこと。冒頭からして主題提示のかすれんばかりのピツィカートに息を呑む。この主題をピツィカートで弾くとは!
 
その後も自暴自棄で血も涙も枯れ果てた音、荒れ狂って暴力的と言いたいくらいのどぎついフレージングはピリオドとかモダンとかじゃなくてクラシック離れしている。極めつけはオリジナル版のエンディングにつづくアルペジオによる主題回想(オリジナル版にはない)。満身創痍の白鳥が最期の瞬間、息も絶え々々に呟くような…。
 
お子様の情操教育に聴かせるにはまったく適さない、【R-15指定】の凄惨なヴィターリ。

シャコンヌ(ヴィターリ)/桐山建志

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<曲名>
シャコンヌ(ヴィターリ)
 
<演奏>
桐山建志(バロック・ヴァイオリン/Minoru Sawabe製作(グァルネリ・デル・ジェス・モデル),1991年)
大塚直哉(チェンバロ/Bruce Kennedy製作(model Ch. Zell),1995年)
諸岡範澄(バロック・チェロ/Carlo Tononi製作,1730年)
【2000年録音、Caille records】
http://www13.plala.or.jp/caille/caille/728/index.htm (試聴できます)
 
トマゾ・アントニオ・ヴィターリ(1663~1745)は、コレッリ(1653~1713)とヴィヴァルディ(1678~1741)と同時代のイタリアの音楽家ですが、この有名な「シャコンヌ」は疑作とされており、19世紀の贋作という説もあります。当盤の解説でも「現在ではヴィターリの真作ではないと結論づけられている。」と断定的に書かれていますが、決定的な証拠があるわけではなく、ぼくの認識はあくまで「真贋論争がある。」というだけです。
 
また、真贋問題に加えて版問題もあり、後者について大別すると以下の通りです。
「ヴィターリのシャコンヌ」の主な楽譜
【A】ドレスデンのザクセン国立図書館所蔵の手稿譜(ヴァイオリン+通奏低音)
【B】ダーヴィト編曲版(ヴァイオリン+ピアノ)
【C】シャルリエ編曲版(ヴァイオリン+ピアノ)
○【A】がオリジナルですが、ヴィターリの自筆譜ではなく、リンダーなる同時代の他人による手稿譜。
○【B】は、【A】をもとに、19世紀ドイツのヴァイオリニストで、メンデルスゾーンの友人にしてメンコンの初演者としても有名なフェルディナント・ダーヴィト(1810~1873)が編曲したもの。
○【C】は、【B】をもとに、フランスの音楽学者レオポルド・シャルリエ(1867~1936)がいくつかの変奏をカットして並び順を一部変更し、さらにソロパートもピアノ伴奏も大幅に音を増やしてドラマチックに編曲したもの。
 
上記の3つ以外にも様々な版がありますが、3つのうちいずれかをもとに編曲した、言わば「派生版」がほとんどです。現在最も一般的なのはシャルリエ版(上記【C】)で、オイストラフをはじめ、世界中で多くの(特に近年は圧倒的多数の)ヴァイオリニストが使用しています。
 
今回はオリジナル版(上記【A】)による演奏を紹介します。シャルリエ版を聴き慣れた方は素朴すぎて物足りないと感じるかもしれませんが、厚化粧を落としたシンプルなシャコンヌは、ぼく自身、「これが最も美しい」と思っていることが、「ヴィターリのシャコンヌ」シリーズ第1回に持ってくる本当の理由。

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