<曲名>
ピアノ四重奏曲第1番ト短調(ブラームス/シェーンベルク編曲)
<演奏>
(1)準・メルクル指揮NHK交響楽団【1998年録音(Live)、Altus】
(2)準・メルクル指揮MDR交響楽団【2007年録音、Querstand】
(1)は1998年4月29日のN響定期。ぼくは当夜のFM生放送を偶然聴いていなかったら、この曲を好きになっていたかどうか分からない。音質良好とは言い難いエアチェックテープを何度聴いただろう。だから、2~3年後にアルトゥスからCD化されたときは目を疑った。でも、なぜか他人事のような醒めた音になってしまっている理由がぼくには分からない。
白眉は第3楽章。こんなにたっぷり歌う演奏をほかに知らない。なんで他の指揮者はせかせかと足早に振り急ぐのか。そしてマーチ風の中間部は一転してほかの誰もやらない快速テンポで、ディズニーランドばりのカラフルなサウンドを撒き散らす。も~!快感
第4楽章もメルクルの独壇場。場面ごとの緩急の変化が大胆でドラマチック、まるで劇的なオペラの終幕を観ているかのようで、途中でトイレに立つことなんてとてもできない。
(2)は待望の再録音(オーケストラは旧・ライプツィヒ放送交響楽団)。基本的な解釈は変わらないけど、(1)とは一長一短で、どちらかを選ぶのは究極の選択となる。一発ライヴで傷だらけの(1)と違い、(2)は細部をつくり込んで凝っている反面、棒のしなやかさが減じて流れが人工的と感じる。メルクルは緻密な音楽づくりをしたいのかもしれないが、そんな演奏はほかにもある。(1)の感興と(2)の精度を兼ね備えた第三の録音が真の待望。
○ディスコグラフィ
(録音年代順)
【1938年】オットー・クレンペラー指揮ロサンゼルス・フィル[Archiphon](1938年5月7日録音)■
【1938年】アルトゥール・ロジンスキー指揮NBC交響楽団[St-Laurent Studio](1938年12月24日録音)
【1962年】エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団[Vibrato](1962年11月17日録音)■
【1964年】ロバート・クラフト指揮シカゴ交響楽団[SONY](1964年7月20日録音)※1
【1978年】若杉弘指揮ケルン放送交響楽団[Koch Schwann原盤/ALTUS](1978年3月17日録音)
【1979年発売】ハンス・ツェンダー指揮ユンゲ・ドイチェ・フィル[DG原盤(LP)/Berlin Classics]★
【1979年】ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮王立ストックホルム・フィル[MELODIYA](1979年2月9日録音)LP
【1982年】グスタフ・クーン指揮シュトゥットガルト南ドイツ放送交響楽団[自主制作盤](1982年11月24日録音)LP
【1983年】エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ベルリン・フィル[Fkm](1983年6月21日録音)■★
【1983年】セルジュ・コミッショーナ指揮ボルティモア交響楽団[VOX]
【1984年】サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団[EMI](1984年6月19日録音)
【1985年】マイケル・ティルソン・トーマス指揮バイエルン放送交響楽団[SONY](1985年2月6~8日録音)
【1988年】ネーメ・ヤルヴィ指揮ロンドン交響楽団[CHANDOS](1988年7月11~13日録音)※2
【1989年】クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団[自主制作盤(クリーヴランド管弦楽団75周年記念)](1989年10月26~28日録音)
【1990年】ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ロンドン・フィル[Collins原盤/Retrospective Revival](1990年3月録音)
【1990年】ジェフリー・サイモン指揮ロンドン交響楽団[CALA](1990年10月1日,10月3~4日録音)
【1991年】ミヒャエル・ギーレン指揮南西ドイツ放送交響楽団[Intercode](1991年4月録音)
【1991年】ピエール・バルトロメー指揮リエージュ・フィル[Ricercar](1991年10月録音)
【1993年】Peter Hirsch指揮Jeune Philharmonie[PAVANE Records](1993年9月6日録音)
【1995年】クリストフ・エッシェンバッハ指揮ヒューストン交響楽団[RCA](1995年3月録音)
【1995年】クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮ウィーン・フィル[DECCA](1995年3~4月録音)★
【1996年】エド・デ・ワールト指揮シドニー交響楽団[ABC](1996年2月録音)
【1998年】準・メルクル指揮NHK交響楽団[Altus](1998年4月29日録音)★
【1998年】ロバート・クラフト指揮フィルハーモニア管弦楽団[Koch Schwann原盤/NAXOS](1998年10月録音)
【2000年】ルー・ジア指揮ノールショピング交響楽団[BIS](2000年4月録音)
【2000年】余隆(Long Yu)指揮中国フィル(China Philharmonic Orchestra)[中国DG](2000年11月録音)
【2004年】サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル[En Larmes](2004年4月27日録音)■★
【2004年】サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル[EUROARTS](2004年5月1日録画)DVD★
【2006年】ダニエル・ライスキン指揮ライン州立歌劇場管弦楽団[cpo](2006年11月録音)
【2007年】準・メルクル指揮MDR交響楽団[Querstand](2007年4月23~27日録音)★
【2009年】ジョルジュ・プレートル指揮ローマ聖チェチーリア音楽祭管弦楽団[東武](2009年3月17日録音)
【2009年】サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル[EMI](2009年10月30日~11月7日録音)
【2010年発売】Pedro Halffter指揮Orquesta Filarmonica de Gran Canaria[Warner Classics]
【2013年】マイケル・ティルソン・トーマス指揮ウィーン・フィル[DIRIGENT](2013年4月7日録音)■
【2014年】マルク・アルブレヒト指揮オランダ・フィル[PENTATONE](2014年6月録音)
【調査中】ジョルジュ・シフラ jr.指揮ブダペスト交響楽団[Pathe]
【調査中】チョン・ミョンフン指揮フランス国立放送フィル■
※1 録音年月日の情報提供:torikeraさん
※2 録音年月日の情報提供:SL-Maniaさん
■=非正規盤
★=Loree所有盤(7枚)
前回更新日:2015年1月16日
最終更新日:2015年9月23日