2013/02/28
ジゼル(アダン)
どの楽器でも、オーケストラにはソロがあります。管楽器に比べると、弦楽器はその機会は少ないですが、首席奏者が披露するソロはどれも印象的です。
<曲名>
バレエ「ジゼル」第2幕~パ・ド・ドゥ(アダン)
http://www.youtube.com/watch?v=eqRHVe_VrR8 (6分55秒)
アドルフ・アダン(1803~1856)と言えば「ジゼル」です。アダンの名前はほとんど知られていなくても、「ジゼル」はバレエの世界では知らない人のいない超人気演目です、間違いない。
イケメン王子が身分を隠して村に潜り込み、純朴な村娘ジゼルと恋仲になる。しかしジゼルはこの恋が身分違いで、しかも自分が二股されている(しかも遊ばれているほう)とは夢にも思わない。真実を知ったジゼルはショックのあまり死んでしまい、亡霊となってウィリ(花嫁になれずに死んだ女亡霊)に仲間入りする。夜になってジゼルの墓を訪れた王子を女亡霊たちが取り囲む。絶体絶命!しかしジゼルは亡霊となった今も王子を愛していて、身を挺して王子を庇おうとする。そして二人の愛のデュエットが始まる…(上の動画はこの場面)
二人を包むのは、愛の溜め息も混じる極甘の音楽。冒頭からソロを弾くのはヴィオラ。これがもしヴァイオリンだと生々しすぎ、チェロだと存在感がありすぎる。この場面にヴィオラの中性的な音色を選んだオーケストレーションは天才的です。
メロディーが管楽器に移る箇所もヴィオラはアルペジオでオブリガードを付けますが(1分37秒~)、フィストゥラーリ、カラヤン、ボニングの演奏ではここにオブリガードはなく、管楽器に完全に譲ってヴィオラは休止しています。バレエの現場で使用されるスコアはオブリガードのブリッジによってヴィオラは数分にわたって弾きっぱなしという、他に類例の心当たりがないほどの長大なソロとなっています。
まるで、ヴィオラ協奏曲。
(Loree所有盤)
【1959年】アナトール・フィストゥラーリ指揮ロンドン交響楽団[MERCURY](全曲盤)
【1961年】ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィル[DECCA](全曲盤)
【1962年】リチャード・ボニング指揮ロンドン交響楽団[DECCA](パ・ド・ドゥのみ)
【録音年不明】スタニスラフ・ゴルコヴェンコ指揮サンクトペテルブルク放送交響楽団(パ・ド・ドゥのみ)