2013/03/31
1920年代のスウィンギング・パリ
フランツ・リスト編曲の「イゾルデの愛の死」を十八番とする広島の某美人ピアニストさんと2年ぶりにお会いして、今日は真昼からビール飲んでいたことを、もう一人の広島の飲み仲間Y先生は知りません。
<アルバムタイトル>
「屋根の上の牛」 1920年代のスウィンギング・パリ【2012年録音、Virgin/EMI】
「屋根の上の牛」と言っても、ダリウス・ミヨーのバレエ音楽(1920年初演)ではなく、その曲名を店名とするパリのキャバレーで演奏されていたレパートリーを集めた、アレクサンドル・タローの最新アルバム。
「キャバレー」という場所には行ったことありません(間違いない)。「屋根の上の牛」のことを調べてみると、「サロン」「バー」「居酒屋」「レストラン」等々と説明されていますが、なんとなくどれも言い得てないような気がする。この店はミヨー自身やプーランクなどのフランス6人組、ラヴェル、サティ、ジャン・コクトー(ミヨーの「屋根の上の牛」の台本を書いた)も常連だったそうで、若い芸術家が金持ちのはずがないから上流階級向けではなく、でも世俗的でもなく、品の良さと猥雑さが同居しているようなイメージ(あくまで想像)。
2年前にY先生がクレマン・ドゥーセ(Clément Doucet)を見つけてきたときは名前の読み方も判らない未知の人物でしたが、彼こそ、ジャン・ヴィエネル(Jean Wiéner)とともに「屋根の上の牛」で弾いていたピアニストでした。
<曲名>
Chopinata ショパンの主題によるファンタジー・フォックストロット(クレマン・ドゥーセ)
アレクサンドル・タロー(ピアノ)
http://www.youtube.com/watch?v=k80xXKyqODk (3分28秒)
<曲名>
Isoldina 「トリスタンとイゾルデ」の主題によるピアノ・ソロのためのノヴェルティ(クレマン・ドゥーセ)
クレマン・ドゥーセ(ピアノ)
http://www.youtube.com/watch?v=uZ6V93WxYhU (2分19秒)
「ショピナータ」は「軍隊ポロネーズ」の前奏と嬰ハ短調のワルツと「幻想即興曲」の中間部によるパロディ。この演奏はアルバムの公式プロモーション映像のようです。次の「イゾルディーナ」はドゥーセの自作自演(1927年録音)。ヴィエネル&ドゥーセのSP録音はEMIからCD化されていますが(※)、現在は入手困難かも。
それにしても、よりによって「イゾルデの愛の死」をパロディにするとはなんたる才気!1920年代の「屋根の上の牛」に思いを馳せつつ、なぜか、ワルトラウト・マイヤーの流血のイゾルデも頭の中に登場して交錯する、ホロ酔いの休日の午後。
※ フランスEMI(2005年) ≪Les Années Folles≫
Doucet at the Piano at the ≪Le Boeuf sur le Toit≫