2013/06/29
オーボエ協奏曲(モーツァルト)
<曲名>
オーボエ協奏曲ハ長調K314(モーツァルト)
モーツァルトの「K314」は、歴史的には「フルート協奏曲第2番ニ長調」として後世に伝わった作品ですが、実は「オーボエ協奏曲ハ長調」という原曲が存在したことが20世紀になって判明しました。そもそも管楽器のための協奏曲というジャンルはピアノ協奏曲とかヴァイオリン協奏曲ほどレパートリーが潤沢じゃないので、どっちが原曲にしてもオーボエにとってはたいへん貴重です(←Loreeが吹けるかどうかは別問題)。
それでも、長年にわたって「K314」の本家として刷り込まれてきたフルート版に比べると、オーボエ版はなぜか肩身が狭くて、かつてオーボエ奏者は「この曲はフルート協奏曲として有名だけど、実はオーボエ版が原曲で…」と言い訳がましく紹介したものです(たぶん)。近年は日本人オーボエ奏者の黒木泰則氏の尽力によってその立場はすっかり逆転し、今では「えっ、フルート版もあるの!?」と驚く方も多いのではないかしらん。
ここから本題。前回記事と前々回記事ではオーボエ・ダモーレとイングリッシュホルンを聴き比べてみましたが、オーボエという楽器は奏者による音色の違いが大きく、これが本当に同じオーボエかと思うほどです。というわけで、今回は20世紀を代表する2人のオーボエ奏者を聴き比べます。
<演奏>
ローター・コッホ(オーボエ)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル【1971年録音、EMI】
http://www.youtube.com/watch?v=c4Jrak58maI (7分26秒) オーボエのソロは1分03秒~
とても現実に人間が吹いているとは思えない、まるで魔法の世界から届けられた音。元来、リード楽器はトゲトゲしく、ビリつきのある粗野な音がするものですが、究極まで熟成するとここまで柔らかくなるものでしょうか。まるで霜降り和牛のような旨味のある音は、いかにもカラヤンらしい豊満なサウンドと意外にもマッチしていて、なるほど彼はこのオーケストラの首席だったと思い出します。
<演奏>
ハインツ・ホリガー(オーボエ)、ヘスス・ロペス=コボス指揮ローザンヌ室内管弦楽団
http://www.youtube.com/watch?v=A2UC3Fo765w (8分21秒) オーボエのソロは2分12秒~
体脂肪を極限まで落とした細身の音は、まるで金属の針先にリードを付けているかのようです。いかにも薄そうなリードで、オーボエという楽器はこんなにしゃべるように自由自在に表情豊かな音を引き出すことができるのかと感嘆せずにはいられません。この演奏はライヴのハンディがあるし、ひょっとしたら全盛期を過ぎているかもしれませんが、はじめの1フレーズでホリガーだと判る音です。
さて、どちらがお好みですか?