2013/07/31
シャコンヌ(ヴィターリ)/リチャード・ヨンジェ・オニール
<曲名>
シャコンヌ(ヴィターリ)
<演奏>
リチャード・ヨンジェ・オニール(ヴィオラ/Giovanni Tononi製作,1699年)
Ulrich Wolff(ヴィオローネ)※
Leon Berben(チェンバロ)※
※「アルテ・ムジーク・ケルン」のメンバー
【2008年録音、韓国ARCHIV】
http://tower.jp/item/2723585/Mysterioso
http://www.youtube.com/watch?v=PTLIs3jNkLo (11分48秒)
<アルバムタイトル>Mysterioso<アルバム収録曲>ヴィオラ協奏曲(テレマン)/「ラクリメ」5声コンソート版ほか(ダウランド)/シャコンヌ(ヴィターリ)/カノン(パッヘルベル)/ラ・フォリア(コレッリ)/パッサカリア(ヘンデル~ハルヴォルセン)/パッサカリア(ビーバー)
異色のアルバムです。韓国系アメリカ人ヴィオラ奏者リチャード・ヨンジェ・オニール(略してヨンジェ)と、「ムジカ・アンティカ・ケルン」(略してMAK)の出身メンバーが中心のピリオドアンサンブル「アルテ・ムジーク・ケルン」(略してAMK。ややこしい!)の共演。この録音でヨンジェは自分のヴィオラにガット弦を張ってバロック弓を使い、ヴィターリ、コレッリ、ビーバーのヴァイオリン曲を弾く!パッヘルベルのカノン(MAK直伝の超高速カノン)も、3本のヴィオラと通奏低音です。さらに、韓流スターばりにポーズをキメたヨンジェの一人写真が満載(合計18カット)の豪華ブックレット!
ぼくはヨンジェのことを当盤で初めて知ったのですが、彼のお母さんが戦争孤児で養女としてアメリカに渡ったことなど、一家の物語は2005年に韓国KBSテレビで取り上げられ、さらにエッセイも出版され、人気沸騰となったらしい。こういうマーケティングは日本でもよくあります。豪華ブックレットの謎が解けた気がする。
ヴィオラによる「ヴィターリのシャコンヌ」はHartmut Lindemannも録音していますが、Lindemannはピアノ伴奏でシャルリエ系の編曲版、ヨンジェはヴィオローネとチェンバロの伴奏でドレスデンの手稿譜に基づくオリジナル版(過去記事で紹介した桐山建志さんなどの演奏と同じ)。ヨンジェがオリジナル版を弾いているのは、アルバムのコンセプトを考えれば自然なことです。
しかし、ヨンジェのアプローチは曲によってカメレオンのように変わります。テレマンの協奏曲をAMKのスタイルに合わせて(?)フレーズを短く切って弾く一方、ヴィターリでは息の長いフレーズを流麗に弾く。おそらく後者が彼本来のスタイルではないでしょうか。古楽とかけ離れたハルヴォルセンを同じアルバムに入れるセンスにも、彼のロマンチックな資質が見え隠れします。
また、ヴィオラの音域はヴァイオリンよりも5度低いので、2人とも原調(ト短調)から5度下げてハ短調で弾いています。ヨンジェは通奏低音にチェロではなくヴィオローネ(コントラバスのような古楽器)を使っていて、低音志向に輪をかけますが、音域の低さと表現の深さは別問題です。ヨンジェのヴィターリは豪華ブックレットと同じ世界観でひたすら美麗。それはいいけど、「ヨンジェ写真集」は微妙~
