ジュニアオケ退団

ゆうちゃんは15歳、中学3年生です。ゴールデンウィークにおこなわれた演奏旅行をもってジュニアオケを退団しました。受験生ということを一応自覚しているようで、塾に行きたいと言い出し、3月から週4日も通っています。今日(土曜)も塾でした。
 
オケの練習は土曜か日曜のどちらかなので、土曜は塾と重なるけど、オケも参加できる日だけでも弾かせてもらったらいいんじゃないかと言ったのですが、すべては本人の決断です。演奏旅行のような、めったに経験できないイベントを最後に退団するのは本人にとっては最高のタイミングだったと思います。
 
ゆうちゃんがこのオケに入ったのは小学6年の夏でした。それ以前にも広島のジュニアオケで弾いていましたが、どちらのオケも実質的には弦楽合奏団で、毎週の練習に参加するのは20名程度。しかもほとんどヴァイオリンです。足りないパートは本番(それと直前の練習)だけエキストラを呼びます。
 
ピアノ協奏曲第1番ハ長調~第1楽章(ベートーヴェン)
 
交響曲第7番イ長調(ベートーヴェン)
 
演奏旅行のプログラムは3月におこなわれた定期演奏会とほぼ同じ。動画は3月の定演です。ゆうちゃんはベートーヴェンのピアノ協奏曲でコンミス席に座らせてもらいました!実は、このオケでは子どもたちが真の意味でコンマスやコンミスを務めることはなく、単にそこに座っているだけの「コンミス席」なのですが、子どもたちは一つのステイタスだと思っていて、ゆうちゃんは誇らしげです
 
なお、メインのベト7のコンミスを務めたエキストラの(プロの)素敵なお姉さんは本物のコンミスです。ピアノ協奏曲ではゆうちゃんの隣の席ですが、実質的なコンミスがこのお姉さんであることは言うまでもありません

 
ピアノのソリストはゆうちゃんと同学年の男子。某有名国際コンクールのアジア部門のジュニア部門で入賞した実力者ですが、ふだんはこのオケでヴァイオリンを弾いている団員です。当初、アンコールはベートーヴェンの「悲愴ソナタ」の第2楽章の予定で、ゆうちゃんは大好きな曲なので超楽しみにしていたのですが、直前にショパンの「革命」に変更になって、「なんで~!」と憤慨していたわりに特等席(コンミス席)でガン見して聴き入るゆうちゃん。
 
それにしても、毎回思うのは「アマチュアオケの演奏は管楽器で決まる」ということ。先生のツテで集めた音大生たちの実力が弦楽器の子どもたちと別次元であることはベト7の冒頭だけで明らかです。でも、趣味で気楽に弾いているだけの子どもたちが、年1回であっても上のレベルの演奏を経験させてもらえることに、ぼくは指導者の先生方に心底感謝しています。
 
ゴールデンウィークの演奏旅行は、ぼくは船の予約が取れず、聴きに行けませんでした。しかし3月の定演で十分満足です。高校生になったら、またオケに入ってくれたらうれしいな。
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アリアと変奏(パッヘルベル)

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<曲名>
カノン ニ長調(パッヘルベル)
 
<演奏>
(1)クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団【1960年代初頭録音(?)、ERATO】
https://www.youtube.com/watch?v=WitJc_-XazA (5分59秒)
(2)クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団【1964年録音、fontana】
(3)クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団【1976年録音(?)、ARION】
(4)クルト・レーデル指揮プロ・アルテ管弦楽団【1994年録音、RCA】
(5)クルト・レーデル指揮プラハ・プロ・アルテ室内管弦楽団【2001年録音、中部電力】(←情報提供:yositakaさん、torikeraさん)
 
先ずは有名なカノン。カノンとは「カエルの歌」のような輪唱の形式で、変奏曲という意味合いはないと思いますが、この4拍子のカノンは冒頭の2小節で提示される通奏低音の8つの音がひたすら繰り返され(固執低音)、その上で3部に分かれたヴァイオリンパートが変奏しながら2小節の時間差で追いかけるという、数学的とも思える構造です。
 
イメージ 2
 
クルト・レーデルのカノンは少なくとも5つの録音があります。(5)の解説によると「原曲は小編成だが、レーデルのオーケストラ編曲により有名になった」。それは必ずしも「世界初録音」という意味ではないけど、わが国でも半世紀以上前から聴かれている(1)ほど現代人の琴線に触れる演奏が彼以前にあったとは信じられず、それどころか、今日においても存在しないかもしれません。(画像の国内盤レコードは1963年発売。演奏は前々回記事「精霊の踊り」を含む仏ERATO盤と同じ)
 
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<曲名>
シャコンヌ ヘ短調(パッヘルベル)
 
<演奏>
クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団【上記(1)と同じ】
https://www.youtube.com/watch?v=9Iq-kd720aE (8分34秒)
ヘルムート・ヴァルヒャ【1977年録音、ARCHIV】
https://www.youtube.com/watch?v=APPMsTpHhaY (7分33秒)
 
クルト・レーデルの(1)のカノンのレコードでは、カノンにつづいてシャコンヌが弦楽合奏で演奏されています。シャコンヌとは固執低音をもつ3拍子の変奏曲です。ぼくはシャコンヌという形式自体が好きですが、この曲は(ヴィターリ等々と同じように)主音から1つずつ下がっていく4つの音(ファ-ミ♭-レ♭-ド)が繰り返される、Loree偏愛の固執低音
 
イメージ 4
 
このシャコンヌは、総勢8名の作曲家の24曲でバッハ以前のドイツ・オルガン音楽を俯瞰するヘルムート・ヴァルヒャの引退録音にも選ばれています。多数のオルガン曲(CD10枚相当)を残した巨匠の今日最も有名な作品(カノン)がオルガン曲でないのは何とも皮肉ですが、バッハにも大きな影響を与えた存在だったことを疑いません(←10枚も聴けないので1曲で納得することにした男、Loree)。
 
イメージ 5
 
<曲名>
変奏付きアリア イ長調(パッヘルベル)
 
<演奏>
ムジカ・アンティカ・ケルン【1980年録音、ARCHIV】
https://www.youtube.com/watch?v=8jKo4LGT0MI (10分00秒)
 
主題(アリア) 0分00秒~
第1変奏 1分13秒~
第2変奏 2分10秒~
第3変奏 3分04秒~
第4変奏 3分54秒~
第5変奏 4分43秒~
第6変奏 5分34秒~
第7変奏 6分37秒~
第8変奏 7分25秒~
第9変奏 8分21秒~
主題(アリア) 9分11秒~
 
総勢6名の作曲家の14曲(その他、バッハによる編曲1曲)でバッハ以前のドイツ室内楽を俯瞰する、ムジカ・アンティカ・ケルン(略してMAK)の名企画。
 
このアルバムは超高速カノン(→ https://www.youtube.com/watch?v=l8Jjs36bHd4 )が有名ですが、同じくパッヘルベルのソロ・ヴァイオリンと通奏低音のための「変奏付きアリア」は当盤以外で聴いたことがない秘曲にして白眉。カノンやシャコンヌのように数小節の固執低音を切れ目なく繰り返すのではなく、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」のように独立性のあるアリアを主題とし、9つの変奏を経て、最後にアリアが回帰する
 
カノンよりも複雑にしてカノンに劣らず泣かせるコード進行は、パッヘルベルよりも古い世代の、これまた偏愛のシュメルツァーを彷彿とさせる暖かさ。変奏が進むにつれて音符が細かくなっていき、一転、第6変奏では隣室から漏れ聴こえるような甘い吐息に思わずドキっとする。弾いてるのは男だけど
(ラインハルト・ゲーベル、当時28歳)
 
ソロと通奏低音の中間帯で、終始控えめにハーモニーに彩りを添える2本のガンバも絶妙な隠し味。このパートはひょっとしたらMAKのアイディアかもしれないけど、もしパッヘルベル自身が書いたものだとしたら、ガンバを趣味で弾くパトロンがいて、その人のために用意したパートだったのでは…なんて、想像してみる。
 
ぼくはこの曲を「わが人生の10曲」に挙げてもいい。

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