2016/03/19
卒業記念舞踏会(ヨハン・シュトラウス2世/ドラティ編曲)
昨日は卒業式でした。この3年間、細かく振り返るといろいろあったのですが、感覚としてはあっという間。幼稚園や小学生のときは「あんな小さかった赤ちゃんが大きくなったねぇ」という感慨があったけど、赤ちゃん時代はもう遠い過去で、いつの間にか、ぼく自身の記憶も鮮明な自分の高校時代と同じ年頃に達しようとしている、まるで仮想現実のような紛れもない現実に狼狽します。しかし昨日の式のあと、「今日は来てくれてありがとう。」と自然に言ってくれるゆうちゃんがわが子でよかったと、心から思います。
<曲名>
バレエ「卒業記念舞踏会」(ヨハン・シュトラウス2世/ドラティ編曲)
<演奏>
(1)アンタル・ドラティ指揮ダラス交響楽団【1940年代後半録音(?)、RCA】(約30分)
(2)アナトール・フィストゥラーリ指揮ロンドン新交響楽団【1953年録音、DECCA】(約37分)
(3)アンタル・ドラティ指揮ミネアポリス交響楽団【1957年録音、MERCURY】(約26分)
(4)ウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・フィル【1960年録音、DECCA】(約34分)
(5)アンタル・ドラティ指揮ウィーン・フィル【1976年録音、DECCA】(約41分)
「卒業記念舞踏会」は、ドラティが「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」の指揮者を務めていた時期にシュトラウスのあまり知られていないワルツやポルカを使って構成した編曲作品です(1940年初演)。ウィーンの名門女学校の卒業記念舞踏会に陸軍士官学校の候補生たちが招かれ、はじめのうちはみんなモジモジしているけど、次第にカップルになっていくという、要するに上流階級の若い男女の合コンを描いたバレエです。
音楽の宝庫を切り刻むという作業は、それほど簡単なことではなかった。というのは、物語のために無理に縮めたり伸ばしたりしたくなかったのだ。物語の展開も損なわず、音楽も損なわないで作るには、一方でシュトラウスの原曲を尊重しながら、しかも一方では何の制約もなしに私の自由にさせてもらうことによってのみ可能となる。そこで≪卒業記念舞踏会≫という作品は、シュトラウスの作品による接続曲として聴いてはならないもので、むしろ一つの物語に合わせて新しく再構成された“シュトラウスの音楽”と受け取られるべきものだ。(アンタル・ドラティ)
ところが、初演後、楽譜がすべて行方不明になってしまい、ドラティが記憶をもとに第2版を作成。さらにその後、オリジナル版が発見され、ドラティ自身が両版を組み合わせたミックス版を作成したので、全部で3つの版があり、たいへんややこしい。
そんなわけで、録音ごとに演奏時間がかなり違うのはテンポの速い遅いや繰り返しの有無だけでなく、そもそも採用されている原曲が違ったり、曲自体のカットの有無によります。ミックス版(5)の原曲は以下の通りですが、(1)(3)に登場する「ヴェネツィアの一夜」は(2)(4)(5)には含まれず、一筋縄ではいきません。全容の解明が待たれます(←他力本願なLoree)。
ミックス版の原曲(バレエの場面は■、曲名は赤字で記載)
■イントロダクションと女生徒のワルツ
・「加速度ワルツ」作品234
■士官候補生の到着
・カドリーユ「愉快な仲間」作品86
■宴の始まり
・ワルツ「法律家舞踏会」作品177
・ワルツ「パンフレット」作品300
■鼓手の踊り
・ワルツ「メフィストの地獄の叫び」作品101
・カドリーユ「仮面舞踏会」作品92
■レ・シルフィードとスコッツマン
・ワルツ「夜の蝶」作品157
・ワルツ「おとぎ話」作品312
■お茶目な踊り
・ワルツ「文芸欄」作品293
■ヴィルトゥオーゾ・ポルカ
・(原曲不明)
■ライバルのバレリーナ
・ポルカ「狩り」作品373
■先生と生徒
・喜歌劇「ウィーンのカリオストロ」第1幕
■常動曲
・ワルツ「新聞記者」作品321
・「常動曲」作品257
■マズルカ「将軍と女校長」
・ワルツ「マイノスの響き」作品145(ヨハン・シュトラウス1世)
・ポルカ=マズルカ「バガテル」作品187
■グランド・ギャロップ
・ポルカ「宮廷小舞踏会」作品230
・カドリーユ「美しい世界」作品199
・ポルカ「仮装行列」作品240
・「トリッチ・トラッチ・ポルカ」作品214
・ポルカ「特急(急行列車)」作品311
■フィナーレ
・「インディゴ行進曲」作品349
【参考】(5)国内盤CD解説書(福本健氏による)、英語版Wiki