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無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番BWV1006(バッハ)の管弦楽版

イメージ 1
 
<曲名>
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番ホ長調BWV1006~前奏曲(バッハ)
 
前回につづいてバッハ・トランスクリプション。これは有名な曲なので、いろんな編曲があります。せっかくバッハがヴァイオリンという楽器の可能性を最大限に追及するためにあえて無伴奏で書いた曲にわざわざピアノ伴奏を追加したシューマンやメンデルスゾーン、ピアノ独奏に編曲したサン=サーンスやラフマニノフなど。
 
そして管弦楽版。バッハの「無伴奏ヴァイオリン」原曲は4本の弦を駆使してシャコンヌやフーガのような多声音楽に果敢にチャレンジする一方、このホ長調の前奏曲は最後のほうのごく一部に重音がある以外はほとんど単旋律で、でも背後には確かにハーモニーを感じさせるという神業的な作曲技術。その隠れたハーモニーを顕在化させ、しかも大管弦楽で強調するという暴挙!これを余計なお世話と言わずして何と言おうか。
 
<演奏>
(1)レオポルド・ストコフスキー指揮彼の交響楽団【1958~59年録音、EMI】
 
シンフォニック・バッハの代名詞、ストコフスキー(1882~1977)の編曲による弦楽合奏版。原曲の冒頭は短い休符ですが、ストコフスキーは強烈な押し出しでいきなり聴き手をのけぞらせる。その後もヴァイオリンの無伴奏と弦楽合奏を対比させたり、単旋律を複数パートで分け合ったりして工夫を凝らしているが、ハーモニーの補強はわりとシンプルで、輪郭を強調する程度。意外性はあまりない。
 
(2)アンドリュー・リットン指揮ロイヤル・フィル【2010年8月14日収録(Live)】
https://www.youtube.com/watch?v=zUCsmhQk4L0 (6分03秒のうち1分47秒から)
 
プロムスの創始者ヘンリー・ウッド(1869~1944)の編曲による管弦楽版のプロムスにおけるライヴ。この動画の前半は「平均律クラヴィア曲集第1巻第3番」で、それにつづくのが無伴奏の管弦楽版です。ヴァイオリンはほぼ原曲通りに弾き通し、そこに木管が絡んできたり、金管がオルガンのように肉厚のハーモニーを付けたりして、アイディアの豊かさと音響的な美しさを両立させた見事なオーケストレーション!冒頭の一撃のほか、原曲には存在しない音をたくさん加えているのに、わざとらしくない。エンディングはまるでオリンピックかW杯の開会式かと錯覚するほど豪華絢爛な壮麗さで、非常に感動的。間違いない!
 
(3)セルゲイ・クーセヴィッキー指揮ボストン交響楽団【1945年録音、VICTOR原盤/Biddulph復刻】
 
リッカルド・ピック=マンジャガッリ(1882~1949)の編曲による弦楽合奏版。このストコフスキーと同年生まれの長い名前の人は「オラフの踊り」というバックハウスやチッコリーニも弾いたピアノ曲で知られる作曲家(←今、調べた)。この編曲でもヴァイオリンが主導しますが、他のパートの絡み方はヘンリー・ウッドの編曲よりもはるかに複雑で、ほとんど対旋律を形成しているほど。せっかく知的なアプローチでバッハ好きを唸らせるのにエンディングはストコフスキーのような仰々しさ。これは指揮者の責任か。
 
(4)鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン【2011年放送(Live)】
譜例の前奏曲(Loree註:BWV1006の自筆譜、1720年)は1729年のカンタータBWV120aの第二部を開始するためのシンフォニアとして一種のオルガン協奏曲に編曲された。このオルガン協奏曲はその2年後の1731年には伴奏部を拡大した形でカンタータBWV29の冒頭楽章としても使われている。さらに1736、37年頃には当該のパルティータ全体がリュート(?)用に編曲された(自筆譜は武蔵野音楽大学所蔵)。以上のような度重なる編曲からバッハがこの曲をいかに好んでいたかが窺われる。(小林義武「バッハとの対話-バッハ研究の最前線」小学館、2002年)
原曲の単旋律をオルガンが嬉々として弾き通し、それを弦楽合奏と2本のオーボエ、3本のトランペット、ティンパニで彩る祝祭的な気分に満ちた管弦楽版。ちなみに、この編曲でも冒頭の一撃を加えている。トランペットは現代と異なるナチュラル・トランペットで、駅のキオスクか銭湯の脱衣場で腰に手を当ててもう片方の手に牛乳ビンを持ってイッキ飲みするおじさんのような姿勢で吹いている。なんか凄い。エンディングで豪快に連打するティンパニも、もはや無伴奏の世界とはかけ離れているけど気分爽快!これはカンタータ第29番のシンフォニアに転用された、バッハ自身の編曲です。もしかしてだけど~、バッハは自作の管弦楽化をメチャ楽しんでるんじゃないの~♪
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コメント

No title

こんばんは。
ストコフスキーは何かと派手なイメージがありますが、バッハの編曲に関しては、管弦楽で如何にして原曲のイメージ(オルガントーン)を出すかに重きが置かれているのかもしれません。有名なトッカータとフーガの編曲も、例えばヘンリー・ウッドのものと比較すると、原曲のイメージに近いのはストコフスキーだと思っています。
しかし、無伴奏に関しては、ヘンリー・ウッドの格好良さが最高です!
最後のバッハ自身の編曲は、今まで知りませんでした。オルガン協奏曲みたいですが、こんな超ノリノリの楽しい編曲があったとは!

No title

こんばんは。
これだけ一度に、この曲をたくさん聴いたのは初めてで~す♪
パート練習が大変なことだろうと想像…(^_^;
無伴奏・七変化?ですねえ。もはやメロディーラインをフル活用。
それだけ原曲が魅力的なんでしょうねえ。
ヘンリー・ウッドは、まるでブランデンブルク協奏曲のように華やか、リッカルト(なんちゃら)は、おっしゃるとおり、素敵なのに最後がざんねん? バッハ・コレギウム、冷静なオルガニストとリラックスしているようにしか見えないトランペット、インパクトありすぎです☆

No title

Loree教授の解説を見る前に音源を見てしまったんですけど、
「銭湯の脱衣場で腰に手を当ててもう片方の手に牛乳ビンを持ってイッキ飲みするおじさんのような姿勢」
まさに同じことを考えてしまいました。
元トランぺッターとしては興味深い映像でした

No title

こんばんは。蒸し暑いのにサウナに入るのが大好きなロレーさんらしい選曲!よほどお熱いのが好きと見える。ちょうど、前回お会いした時に購入したRobert Hillのアルバムにこの曲のチェンバロ編曲版が入っていました。それは涼やかでこれからの季節に活躍してくれそうですよ♪
A5ランクのサーロインを熟成させて、味噌ダレに二日漬け、いったんガーリックオイルで焼いてから、衣を着けて、カツにしたような編曲?
もしくは、蛇に脚をつけたらバランスが悪いので、羽を付けて尻尾は邪魔だから切っちゃった。と言ったほうが適切?
まぁ~うちでは聴けないです。。
それはさておき、バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏は古楽器を使っているのに、かなり派手ですよね。ナチュラル・トランペットは、某ブロ友さんが「ちょっとオンチなトランペット」と形容されていましたが、音のずれはあまり気にならない(そういう物だと思っているから)のに、オルガンのミスタッチは気になる!!!
オルガン編曲版。カンタータの雰囲気は出てるけど。

https://www.youtube.com/watch?v=V3olBPGLNvc

No title

牛乳やオロナミンCを飲むときは必ず腰に手を当てますね~。イッキ飲みで胸を反らす際に重心を安定させるためかな? 長いナチュラルトランペットの場合も片手&腰のほうが両手で持つより安定して、横隔膜が上手く働くのかもしれませんね。
パルティータ3番、バッハ無伴奏の中でも管弦楽編曲が難しい気がします。個人的にはロン・カーターにピチカートで挑戦してほしい(流石に無理か)。

No title

ポンちゃんさん)
ストコフスキーはもともとオルガニストだったそうですが、彼が編曲したバッハはオルガン風なのかどうか、う~ん…どうなんでしょう(汗)ヘンリー・ウッドの「トッカータとフーガ」は彼自身が指揮する古い録音しか持ってないので(しかも聴いた記憶なし)、動画サイトでアンドリュー・デイヴィス指揮BBC響のライヴを聴いてみました。なんと(部分的ですが)オルガン入り!オーケストレーションは楽器の交替が頻繁でちょっと疲れますが、映像の力もあって(?)意外と楽しかったです(笑)
バッハ自身の編曲がオルガン協奏曲みたいになっているのは、こんな難しいメロディーをオケに委ねることは到底できず、バッハ自身が弾き振りしたのでしょう、間違いない!ぼくは、バッハ自身が無伴奏とのギャップを楽しんでトランペットやティンパニを加えたような気がするんです♪(←妄想)

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musicaさん)
バッハは(ヘンデルなどもそうですが)自作の使いまわしは日常茶飯事でしたが、やっぱり本人も気に入っているからまた使いたくなるんでしょう。さらに後世の人まで、よってたかって(?)あの手この手で(?)編曲して…まさに無伴奏七変化(笑)後世版は本当、パート練習が大変そう
ちなみに、バッハコレギウムのトランペットのおじさんたちも実はすごい大変なことをしていて、指を使わずに吹くということはつまり、すべての音を口だけでコントロールしているということです!!(ビールとかコーラの空きビンにフ~っと息を吹き入れてメロディーをつくる、みたいな?)

No title

よっしー音楽王国交響楽団 元(?)首席トランペット奏者殿)
このポーズは誰がどう見ても牛乳です♪(対抗馬:オロナミンC)
昔の金管楽器って、人間にすごいことを要求していたんですね

No title

n先生)
>蒸し暑いのにサウナに入るのが大好きな…よほどお熱いのが…
「燃える男」と言ってください!!(爆)
チェンバロ版も涼しげそうですけど、バッハ自身の編曲による(無伴奏ヴァイオリンとどっちが先か知りませんが)リュート版もありますね。何を隠そう、ぼくが初めてこの曲を聴いたのはリュート版だったことを思い出しました
BWV29は、派手な編成ですけど「オルガンとその他大勢」みたいな関係ですから、オルガン版も違和感ないどころか(もともと一人で演奏する曲だし)、ひょっとしたら、バッハ自身による失われたオルガン原曲が存在したのでは…なんて妄想してしまうくらい自然な鳴り方。でもなんでオルガンなんですか、ピアノ版のトラックバックをお願いします

No title

ホーシュさん)
牛乳とオロナミンCを飲むときはなぜ必ず腰に手を当てるのか?論文書けそうです♪(笑)
こういうほとんど単旋律の曲のオーケストレーションは「ハーモニー拡充型」か「対旋律創作型」に大別されます(Loree分類法)。個人的にはどちらかと言えば後者にシビれますが、ロン・カーターのピチカート!無伴奏チェロ組曲はやっていますからこの前奏曲もやってほしいです!それ最高にエキサイティングです、間違いない

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時事ネタ「もしかしてだけど~♪」に誰も絡んでくれない

No title

もしかしてだけど~ ロイヤルフィルの~コンミス~は クリオ・グールドじゃないの~♪

No title

噛むカメのことですか?

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ホーシュさん)
おお!ご配慮ありがとうございます、でもマニアックすぎて分かりません(爆)

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musicaさん)
おお!さすがww空から降ってくるかもしれませんから、外を歩くときはご注意

No title

こんばんは。時事ネタ「もしかしてだけど~♪」を検索してみました。
あ~やっぱり、Loreeさんの好きそうな歌詞。やりそうな気がするなあ~♪
バンド名「どぶろっく」も面白いですね。濁酒をひっかけてロックンロールかあ~♪

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coraさん)
二人組のうちの一人が書類送検されました

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今晩のNHKEテレ「クラシック音楽館」でやっていたN響定期公演で、まさにこの作品が取り上げられていましたが、ご覧になりましたでしょうか?
しかも、最初に原曲を演奏し、次にカンタータ版、最後にウッド編曲版で締めるという豪華版でした!
もしかしたらN響関係者の誰かがこの記事を読んでいたりして♪

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ポンちゃんさん)
おはようございます
おお、知りませんでした!最近テレビの番組表をチェックすることもなく、痛恨です
まあこんなマイナーブログが関係者の方の目に留まることはないでしょうけど、原曲→カンタータ版→管弦楽版で3曲並べるなら、やはり豪華絢爛なウッド編曲版でしょうね(ストコフスキーとマンジャガッリは弦楽のみですから)。名企画だと思います
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