無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番BWV1001(バッハ)の二重奏版

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<曲名>
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調BWV1001~プレスト(バッハ/ブラームス編曲/リッチ再編曲)
 
バッハの「無伴奏ヴァイオリン」は4本の弦を駆使してシャコンヌやフーガのような多声音楽に果敢にチャレンジする一方、このト短調ソナタの終楽章はごく一部に重音がある以外はほとんど単旋律で、まるで孤独なサムライのような佇まい。このような単旋律の曲のトランスクリプションは「ハーモニー拡充型」か「対旋律創作型」に大別されます(Loree分類法)。
 
そこで、ブラームスのピアノ編曲版。ブラームスによるバッハ作品のピアノ編曲と言えば「左手のためのシャコンヌ」が有名です(原曲はのちにブゾーニが編曲したシャコンヌと同じ)。ブラームスは右手を故障したクララ・シューマンのためにこの編曲をしたとか。余談ですが、ゆうちゃんが2歳のときに妻が包丁でどっちかの手を怪我して、ぼくが代わりに食事をつくったのですが(インスタントの袋入りラーメン)、そのとき台所に立つぼくの姿がゆうちゃんの最も古い記憶です。よほど珍しい光景だったと思われる。
 
そのブラームス編曲の「左手のためのシャコンヌ」は「ピアノのための5つの練習曲」の中の1曲です。この練習曲集に含まれる5曲の構成は次の通り。
 
「ピアノのための5つの練習曲」(ブラームス)
1)ショパンの練習曲ヘ短調作品25-2
2)ウェーバーのピアノ・ソナタ第1番ハ長調作品24~ロンド
3)バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調BWV1001~プレスト(バージョン1)
4)バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調BWV1001~プレスト(バージョン2)
5)バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004~シャコンヌ
https://www.youtube.com/watch?v=6bDuKiSfbPE (30分01秒)
楽譜はこちら http://imslp.org/wiki/5_Studies,_Anh.1a/1_(Brahms,_Johannes)
 
というわけで、「左手のためのシャコンヌ」のほかにもバッハの無伴奏が含まれている!このプレストがまさに「対旋律創作型」で、このようなアイディアはのちにゴドフスキのバッハ編曲にも使われているけど、まさか先例があったとは知らなかった。しかもブラームス!さらに、バージョン1は右手でバッハの原曲、左手でブラームスの対旋律。バージョン2は左手でバッハの原曲、右手でブラームスの対旋律という逆パターンまで書いているという、執念とも言うべき凝り様。クララと肩を寄せ合って片手同士で連弾したのかどうか、ぼくは知らない。
 
<演奏>
ルッジェーロ・リッチ(ヴァイオリン)【1979年録音?香港111(One-Eleven)】
http://ml.naxos.jp/album/RR005
https://www.youtube.com/watch?v=RIpEUwEOwJ8 (7分20秒)
バージョン1 無伴奏
バージョン1 二重奏(3分43秒~)
 
今回の本題。なんと、ブラームスのピアノ編曲版のト短調プレストをルッジェーロ・リッチがヴァイオリン用に再編曲している!はじめにバージョン1のブラームスが創作した対旋律のみ無伴奏で弾いていて、バッハの原曲とは似て非なるメロディーなのに根底ではつながっていることを確信させる、まるでパラレルワールドに迷い込んだかのような不安感に戦慄を覚えずにはいられない。もしあなたがヴァイオリンを弾けるなら、この録音に合わせてバッハの原曲を弾くとデュエットになるという、実用的な使い方も一興。
 
次に、同じくバージョン1の二重奏。相方のヴァイオリニストの名前が記載されていないけど、まさか、一人で弾いているわけがない。バッハの原曲とブラームスの対旋律が溶け合うなんてもんじゃない、激しくぶつかり合うさまが凄まじく、まるで分身の術で敵を惑わす忍者のようで、聴いているうちに頭がクラクラして、楽譜を見ながら聴いてもどっちが正体なのか分からなくなってくる。
 
未知なる「バージョン3」として、バッハの原曲にブラームスの両バージョンの対旋律を重ね合わせた三重奏に期待。
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